『従妹ベット』 バルザック(藤原書店)

従妹ベット 上 (バルザック「人間喜劇」セレクション <第11巻>)従妹ベット 上 (バルザック「人間喜劇」セレクション <第11巻>)
(2001/07/20)
バルザック

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従妹ベット 下 (バルザック「人間喜劇」セレクション <第12巻>)従妹ベット 下 (バルザック「人間喜劇」セレクション <第12巻>)
(2001/07)
バルザック、鹿島 茂 他

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書名:従妹ベット
著者:オノレ・ド・バルザック
訳者:山田 登世子
出版社:藤原書店
ページ数:346(上)、348(下)

おすすめ度:★★★★★




従兄ポンス』と合わせて「貧しき縁者」に分類されているバルザックの長編小説『従妹ベット』。
決して華々しいストーリーではないが、金と女をめぐる泥臭さが面白いという、いかにもバルザックらしい作品だ。

利己的な人々の群れの中にわずかに正直者がいるという構図は、『従兄ポンス』と同様だ。
しかし、「貧しき縁者」の側が親戚を食い物にしようと画策するという意味では、正反対の物語である。
そしてその手の意地汚い人々の暗躍する物語を書かせれば、バルザックの右に出る小説家はそういないのではなかろうか。

狡猾で執念深いベットの立ち回りのうまさには、全編を通じて感心させられるばかりだが、ベット以上に注目に値するのは、『従妹ベット』の主人公といっても過言ではないユロ男爵だろう。
副題の「好色一代記」は、当然彼を念頭においてのことに違いない。
彼の女関係の、ひいては人間としてのだらしなさは、人間喜劇においても比類がないほどで、バルザックはまったく見所のない人間を何人か生み出してきてはいるが、この男爵の駄目さ加減はトップクラスだと思う。
読者は彼に腹が立つというよりは、ただただその情けなさには呆れてしまうばかり・・・。
男爵夫人の貞淑さとの対比もまた鮮烈で、読者は皆、彼に救いようがない人間との烙印を押すはずだ。
そしてまさにそれゆえに、彼は非常に興味深い登場人物の一人となっている。

長編小説において、何ページにも及ぶくだくだしい脱線をするのがバルザックの癖であり、それを退屈と感じる読者が多いらしいが、この『従妹ベット』にはほとんどそれがない。
登場人物や筋の絡み合いの完成度が高く、全体が緊密に結びついていて無駄がない。
それをわざとらしさとみなすこともできるだろうが、話の面白さという観点からすれば非常に高く評価できるのではなかろうか。
『従妹ベット』は、上・下巻にもかかわらず、ふと気付いたら読み終わっているような、そんな作品だ。
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