『危険な夏』 ヘミングウェイ(草思社)

危険な夏危険な夏
(1987/07)
アーネスト ヘミングウェイ

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書名:危険な夏
著者:アーネスト・ヘミングウェイ
訳者:諸岡 敏行
出版社:草思社
ページ数:254

おすすめ度:★★★★




スペインとは切っても切れない間柄であるヘミングウェイによる、闘牛士たちの命懸けの闘いを描いたルポルタージュがこの『危険な夏』だ。
ヘミングウェイ一行がパンプロナにたどり着いたときには『日はまた昇る』への言及がなされていたりするため、ヘミングウェイの小説に親しんだ人間ならいっそう興味深く読める部分もあることだろう。

自他共に認める当代随一の闘牛士であるミゲルと、類まれなる実力でミゲルに追いつき、追い越そうとしているアントニオ、この二人が闘牛場でその華麗な技を競い合う。
しかし、最高の闘牛士の称号を獲得するための闘いは、彼らの身に迫る危険度が増すことを意味する。
「危険な夏」とは、二人の対決姿勢が強まり、死の危険の大幅に増したシーズンのことを指しているのだ。
二人と親しかったヘミングウェイは、特にアントニオとは闘牛場以外でも共に過ごす時間が多く、単に闘牛場に通い詰める闘牛ファンを超えた視点から描かれているというのも、本書を非常に面白いものにしているはずだ。

『危険な夏』は、そのテーマがテーマであるだけに闘牛用語が頻繁に用いられているため、ある意味で一般受けしにくい本でもある。
用語に対する知識だけではなく、闘牛において闘牛士が牛を殺すに至るまでのステップを大雑把にでも把握しておかないと、ヘミングウェイが何を伝えようとしているのかが今ひとつわからないだろうし、本書を読みながらヘミングウェイの興奮を共にすることは到底望めないと思う。
本書にはジェイムズ・A・ミッチェナーのおよそ50ページにも及ぶ解説が合わせて訳出されているが、そちらに闘牛用語の説明もあるので、闘牛に不案内な方はその用語説明だけでも先に読んでおくとより本書を楽しめるのではないだろうか。

スペインの闘牛界を舞台にしたノンフィクションを書く上で、スリルを求めてやまない作家であるヘミングウェイほどの適任者はいなかったかもしれない。
歴史に残る闘牛士たちの闘いを、こちらも歴史に残る作家が描いた『危険な夏』。
闘牛に、そしてヘミングウェイに興味のある方には非常にお勧めの一冊だ。
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