『ノーサンガー・アビー』 ジェーン・オースティン(ちくま文庫)

ノーサンガー・アビー (ちくま文庫)ノーサンガー・アビー (ちくま文庫)
(2009/09/09)
ジェイン オースティン

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書名:ノーサンガー・アビー
著者:ジェーン・オースティン
訳者:中野 康司
出版社:筑摩書房
ページ数:392

おすすめ度:★★★★




出版時期が前後しているとはいえ、ジェーン・オースティンの実質的な処女作はこの『ノーサンガー・アビー』である。
アビー、もしくはアベイと表記される原語は、修道院を意味する"Abbey"であり、かつては『ノーサンガー僧院』というタイトルも用いられていたようだ。
しかし、そもそも修道院制度が廃止されているイギリスにおいて、「アビー」とはかつて修道院だった建物を指しているのであり、『マンスフィールド・パーク』の「パーク」と同様、「アビー」も屋敷の呼び方の一つに過ぎないから、本作には「僧院」といった堅苦しさも宗教臭さも感じられず、オースティンの描いた女主人公が柄にもなく尼僧になるというわけでもない。
堅苦しいどころか、ストーリー展開の軽妙さはオースティンの長編作品の中でも屈指であるので、気軽な読み物としてお勧めできるのがこの『ノーサンガー・アビー』だ。

本書のヒロインであるキャサリンは、ひょんなことからオースティン自身が若き日を過ごした地でもある温泉保養地バースに滞在することとなる。
世間知らずでゴシック小説が大好きというキャサリンだが、素直でいささか信じやすい性格は、どれだけそそっかしかろうがやはり好感が持てる。
登場人物の造形は全体に粗削りな印象を受けないでもないが、軽薄な人間もいれば誠実な人間もおり、聡明な人間もいれば愚鈍な人間もいるという具合に、オースティン流の物語を進めていく上で必要な役者は十分そろっている。

騎士道小説を読み過ぎた主人公が繰り広げる珍道中を描いた『ドン・キホーテ』に似て、『ノーサンガー・アビー』はヒロインのゴシック小説の読みすぎが展開を面白くしてくれる。
ゴシック小説に対するパロディ的な要素も多分に盛り込まれていて、全般にユーモアやウィットに富んでいるというのも、『ノーサンガー・アビー』を非常に読みやすい小説に仕上げてくれているはずだ。

オースティンの長編六編の中で、『ノーサンガー・アビー』を最高傑作に推す声はめったに聞かれないようだが、タッチが軽めである点に加えて、『説きふせられて』と同様比較的短い作品であるということを考え合わせれば、最も読みやすい作品であるとは言えるのではなかろうか。
オースティンに興味のある方はぜひ手にしてみていただきたいと思う。
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