『紋切型辞典』 フローベール(岩波文庫)

紋切型辞典 (岩波文庫)紋切型辞典 (岩波文庫)
(2000/11/16)
フローベール

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書名:紋切型辞典
著者:ギュスターヴ・フローベール
訳者:小倉 孝誠
出版社:岩波書店
ページ数:316

おすすめ度:★★★☆☆




フローベールが、本来の語の意味とは異なる、当時の通俗的な観念や偏見を集めて編んだ辞典がこの『紋切型辞典』である。
全編にわたって風刺と皮肉に満ち満ちており、風刺性を強めていった晩年のフローベールを知る上で格好の作品であることは間違いなく、『ブヴァールとペキュシェ』の読者であれば、その構想や執筆の経緯などもあって、大いに楽しめるはずの一冊だ。
フランス文学の系譜の面においても、偉大な先人ラ・ロシュフーコーの『箴言集』に連なるものであると言えるのではなかろうか。

本書のページを繰っていくうちに、よくもここまでアイロニーあふれる定義を集めることができたものだと、読者はフローベールのユーモアセンスには舌を巻かざるをえないはずだ。
定義自体はきわめて短いながらも各々の項目はよくできている。
これは余談ながら、最近では「紋切型」という語の意味がわからない人が増えているらしい。
この『紋切型辞典』の存在が、「紋切型」という語の保存・普及に一役買ったとすれば、違った意味で辞典としての役割を担うことになるかもしれない。
悪魔の辞典 (角川文庫)悪魔の辞典 (角川文庫)
(1975/04)
アンブローズ ビアス、奥田 俊介 他

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『紋切型辞典』の読者にお勧めしたいのが、アメリカの作家であるビアスによる右の『悪魔の辞典』だ。
痛烈な皮肉によって社会を切り裂く鋭い視点はフローベールと似通っているが、それぞれの生きた時代性と地域性が異なるため、編まれた語などに若干の差異が見られる。
二つの辞典を比較対照してみるのも興味深いことだろう。

項目とその説明の羅列という、小説でも戯曲でもなく、詩でも評論でもないという独特のスタイルゆえに、いくらか抵抗を感じられる方もいるかもしれない。
確かに、読者の心に感動を呼び覚ますような作品ではないのだが、機知に富んだユーモアのエッセンスが詰まっているのは事実だ。
斜に構えたフローベールだけでなく、当時の俗なフランス社会の実態を窺い知ることのできる本として、空いた時間にぱらぱらめくってみてはいかがだろうか。
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