『片恋・ファウスト』 ツルゲーネフ(新潮文庫)

片恋・ファウスト (新潮文庫)片恋・ファウスト (新潮文庫)
(1952/06)
ツルゲーネフ

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書名:片恋・ファウスト
著者:イワン・ツルゲーネフ
訳者:米川 正夫
出版社:新潮社
ページ数:174

おすすめ度:★★★★




ツルゲーネフの円熟期の中編二編を収めたのが本書『片恋・ファウスト』だ。
ライン河のほとりの町を舞台にした『片恋』と、いかにもドイツらしい雰囲気を帯びたタイトルである『ファウスト』ということで、どちらもほのかにドイツの香りが漂ってくる作品である。
ロシア以外の文学にも通じ、ロシアの外での暮らしが長かったツルゲーネフらしい二編と言えるのではなかろうか。

『片恋』の原題は『アーシャ』で、近年では『アーシャ』とされることの方が増えてきているが、本書では二葉亭四迷による訳題を受け継いで『片恋』としているとのこと。
作中においては物語の語り手よりも自由奔放なアーシャの存在の方が格段に異彩を放っており、そういうわけでツルゲーネフも彼女に比重を置いた表題『アーシャ』を用いたのだろうから、読者に何らかの先入観を植え付けかねない『片恋』よりも『アーシャ』の方が表題としては優れているかもしれない。
いずれにしても、中編小説としての『片恋』もしくは『アーシャ』の出来は素晴らしく、ツルゲーネフのファンでなくとも楽しめる作品の一つに数えられるだろう。

『ファウスト』の方は、大方の読者が想像するとおり、ゲーテの『ファウスト』にちなんだ作品である。
ろくに読書もしたことがないという美しい人妻に主人公がゲーテの『ファウスト』を朗読してあげることになり、二人の運命が変わっていくのだが・・・。
主人公が友人に宛てた書簡というスタイルを取っていて、小説の形式として少々古いのは事実であるが、今日の読者が読んでも十分感銘を受けることができる佳作であるように思う。

『片恋・ファウスト』は中古でしか手に入らないのが現状であるが、それほどレアな本ではないため、アマゾンでは非常に安く売られている。
訳文が少々古いとはいえ、読みにくいというほどでもないので、ツルゲーネフに関心のある方はぜひ手にしていただければと思う。
きっとどことなく『初恋』や『猟人日記』に似た、諦念と優しさを基にしたツルゲーネフらしいペーソスに触れることができるに違いない。
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