『散文詩』 ツルゲーネフ(岩波文庫)

散文詩 (1958年) (岩波文庫)散文詩 (1958年) (岩波文庫)
(1958)
ツルゲーネフ

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書名:散文詩
著者:イワン・ツルゲーネフ
訳者:神西 清、池田 健太郎
出版社:岩波書店
ページ数:210

おすすめ度:★★★★




晩年のツルゲーネフの散文による小品を集めたのがこの『散文詩』である。
生前に出版された約50編に加え、手稿の形で残っていたもの約30編をも収録しており、そのテーマは多岐にわたっていて読み応えがある。
それらの多くは本来ツルゲーネフが『散文詩』という本にしようとの意図をもって書かれていたわけではなく、前半の50編は特に、どちらかといえば断片・断章という性格の散文のようでもあるが、晩年のツルゲーネフの心境を探る上で貴重なエッセンスの集まりとなっていることは確かだ。

『散文詩』が扱うテーマは、人間はもちろんのこと、動物や自然に関するものが多く、政治思想色は薄いといっていいように思う。
細かい相違点を挙げればきりがないにせよ、ツルゲーネフが作家生活を始める契機となった作品である『猟人日記』に通ずる雰囲気も垣間見られるように感じられる。
ツルゲーネフの魅力の一つである優しい思いやりの感じられる文章に出会うことができるので、ツルゲーネフを好きな方にはぜひ本書をお勧めしたい。

『散文詩』に収録されている作品はいずれも数ページで終わる小品ばかり。
ツルゲーネフ自身が読者に対し、一気に読み通さずに気の向くままに紐解いてくれるよう言っていたようで、読者はそれに従うのが賢明かもしれない。
通常の詩集と同じく、何度も気軽に立ち返ることができるのも『散文詩』のいいところだ。

幅広い読者の心を揺さぶりうるのがこの『散文詩』であり、それが証拠にこれまでにだいぶ版を重ねてはきているのだが、現在新品はほとんど出回っていないようだ。
改訳を終えることなく世を去られた神西氏の訳業をベースに池田氏が完了された訳文は読みやすく、挿絵が豊富に入っているのも読者の目を楽しませてくれる。
ツルゲーネフの代表作ではないし、その性質上、代表作にはなりえないかもしれないが、自信を持ってお勧めできる作品の一つだ。
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