『春の水』 ツルゲーネフ(岩波文庫)

春の水 (岩波文庫)春の水 (岩波文庫)
(1961/07/25)
ツルゲーネフ

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書名:春の水
著者:イワン・ツルゲーネフ
訳者:中村 融
出版社:岩波書店
ページ数:263

おすすめ度:★★★☆☆




「春の水」のごとく流れ去っていく、楽しくも幸多き青春時代を描いたツルゲーネフの円熟期の長編作品がこの『春の水』だ。
ツルゲーネフには『初恋』や『片恋』のように、恋愛をテーマにした作品がいくつかあるが、これもそのうちの一つに数えることができるだろう。

『春の水』は、初老に差し掛かった主人公の回想を綴るという体裁で進んでいく。
回想の舞台となる町はフランクフルト。
主人公サーニンは、散策の疲れを癒そうと思って入った喫茶店で、意識を失った弟の命を助けてほしいと懇願する美しいイタリア娘と運命的な出会いを果たす。
彼女から優しく声をかけてもらい、彼は徐々に彼女の魅力に惹きつけられていくのだが、しかし彼女には婚約者がいて・・・。

上記の『春の水』の冒頭部分に描かれる情景は、若き日のツルゲーネフが実際に体験したものらしい。
本書に付せられた5ページに満たない解説を参考にする限りでは、この小説のどこまでが事実でどこからが創造によるものなのか、明確な線引きをすることは難しいが、いずれにしても、作家の身に起きた実際の出来事をベースにした物語ということで興味をそそられるし、主人公と同じく初老のツルゲーネフが自らの過去を追憶しているという事情のおかげで、小説作品としてのリアリティも増しているように思う。
また、いくらかステレオタイプ的な判断ではあるものの、ツルゲーネフのドイツ人やイタリア人に対する評言も読むことができて興味深い。

あまり知名度の高くない作品である『春の水』は、初版以降さほど版を重ねてもいないので、流通量自体は非常に少ないはずだ。
それにもかかわらず、アマゾンでは定価のおよそ10分の1程度と、安価での入手が可能となっている。
初恋』や『片恋』でツルゲーネフの恋愛小説に関心を持たれた方にお勧めしたい。
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