『隊長ブーリバ』 ゴーゴリ(潮文学ライブラリー)

隊長ブーリバ (潮文学ライブラリー)隊長ブーリバ (潮文学ライブラリー)
(2000/12)
ニコライ ゴーゴリ

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書名:隊長ブーリバ
著者:ニコライ・ゴーゴリ
訳者:原 久一郎
出版社:潮出版社
ページ数:224

おすすめ度:★★★★




ゴーゴリの出生の地であるウクライナを舞台とする中編小説を集めた作品集『ミルゴロド』の中の一編が、この『隊長ブーリバ』である。
『ミルゴロド』の収録作品はゴーゴリの若い頃のものであると言われていて、それは間違ってはいないのだが、出版年でいえば『狂人日記』や『ネフスキイ大通り』などと同時期のものとなっている。
しかし、『隊長ブーリバ』はそれらの「ペテルブルグもの」で描かれた世界とは空間的にも質的にもまったく異なる作品で、『』や『死せる魂』の読者からすれば、これまでのゴーゴリのイメージを根底から覆すものとなるかもしれない。

本書の原題ともなっているタラス・ブーリバは、粗暴で剛毅なコサック兵を絵に描いたような人物で、コサックの間でも一目置かれている歴戦の勇者である。
そんな彼が、教育を終えて実家に戻ってきた二人の息子を連れてコサックの集まる駐屯地に赴いたところに、とある知らせが届き・・・。

『隊長ブーリバ』には、鼻が出歩いたり幽霊が登場したりといった幻想性が見られず、ゴーゴリ得意の皮肉やユーモアも影を潜めている。
上官の威厳にびくつく部下もいなければ、金や地位をなりふり構わず求めている卑小な人物もおらず、本書の主役となるのは、感情の起伏が激しく、行き過ぎた勇猛さに加えて残忍さをも備えた、自由奔放に生きるコサックたちである。
今日的な観点からすれば、血と暴力で彩られたコサックの生き様は到底首肯できるものではないにせよ、ゴーゴリの作品の中で最もロマン主義的な作品の一つとして読むとたいへん興味深いものであることは間違いないだろう。

中編小説を集めた『ミルゴロド』に収録された四編は、いずれも現在一般の読者が読みやすい形のものが出回っていないのだが、この『隊長ブーリバ』だけが例外で、現時点ではいまだに新品での入手さえ可能となっている。
ゴーゴリのあまり知られていない筆致に触れたい方に強くお勧めしたい作品だ。
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