『三つの物語』 フローベール(岩波文庫)

三つの物語 (岩波文庫)三つの物語 (岩波文庫)
(1940/06/18)
フローベール

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書名:三つの物語
著者:ギュスターヴ・フローベール
訳者:山田 九朗
出版社:岩波書店
ページ数:215

おすすめ度:★★★★




フローベール晩年の作品集がこの『三つの物語』で、その表題のとおり三つの短編作品が収められている。
ブヴァールとペキュシェ』を執筆中だったフローベールが金策のために手掛けた作品集ということらしいが、時代や舞台のまったく異なるストーリーを集めた『三つの物語』は、それまで幅広い地域・年代を小説の題材にしてきていたフローベールらしさを一冊の本で味わうことも可能となっているため、フローベールに関心のある方には非常にお勧めできる作品だ。

『三つの物語』の収録作品は、『まごころ』、『聖ジュリアン伝』、『ヘロディアス』の三つ。
『まごころ』は、19世紀フランスの純朴な一人の女の生涯を描いたもので、フローベールの的確な筆さばきが非常に冴えわたっている。
一方、『聖ジュリアン伝』は中世に生きた聖人、聖ジュリアンの生涯を描いたものとなっていて、フローベールの生地であるルーアンの大聖堂にあったステンドグラス「聖ジュリアン一代記」をインスピレーション源とした作品だ。
そして『ヘロディアス』はというと、数多くの画家によっても題材とされてきた「サロメ」のテーマを扱ったもので、どういう経緯でサロメの母であるヘロディアスがヨハネの首を求めることになったのかも含めて詳細に描かれているので、ワイルドの『サロメ』の解説的な作品として読むのも悪くないと思う。
こちらもルーアンの大聖堂にサロメの舞いとヨハネの斬首をテーマにした彫刻があったようで、「聖ジュリアン一代記」と合わせて巻頭にその写真が掲載されている。
三つの物語 (福武文庫)三つの物語 (福武文庫)
(1991/11)
ギュスターヴ フロベール、太田 浩一 他

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右に示すように、『三つの物語』は福武文庫からも出されていたようだ。
私自身はその中身を確認したことがないのだが、出版年が1991年と比較的新しいことから、旧仮名遣いが用いられている岩波文庫版より読みやすいのではないかと思われる。
いずれも中古品でしか入手できないという状況に違いはないが、読みやすさを求める方は福武文庫版の方がベターかもしれない。

『三つの物語』は、フローべールが生前に刊行した最後の作品となっている。
執筆環境が恵まれることこそなかったが、多くの作家から文豪の一人として認められるに至った晩年のフローベールの作品ということで、作品の質に関してはある種の折り紙つきと言えるのではなかろうか。
文章量も手頃な作品集であるので、気軽に手に取っていただければと思う。
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