『サラムボー フローベール全集〈第2〉』 フローベール(1966年)

フローベール全集〈第2〉サラムボー (1966年)フローベール全集〈第2〉サラムボー (1966年)
(1966)
不明

商品詳細を見る

書名:サラムボー フローベール全集〈第2〉
著者:ギュスターヴ・フローベール
訳者:田辺貞之助
出版社:筑摩書房
ページ数:368

おすすめ度:★★★★




ローマなどの外敵と血を血で洗う抗争を繰り広げていた、紀元前三世紀のカルタゴを舞台にしたフローベールの長編小説がこの『サラムボー』だ。
ボヴァリー夫人』や『感情教育』の読者であればその舞台設定に意外の念を覚えられるかもしれないが、『聖アントワヌの誘惑』や『三つの物語』の中の『ヘロディアス』の読者であれば、いかにもフローベールらしい作品の一つとして読むことができるのではなかろうか。
事実、フローベールには中近東やアフリカを舞台にした作品が多いのであって、『聖アントワヌの誘惑』が夢幻劇風の作品であり、『ヘロディアス』が短編作品であることを思えば、フローベールの全作品の中で最も強くアフリカ色が打ち出されているのはこの『サラムボー』ということになるはずだ。

カルタゴのために命を賭して戦った傭兵たちだったが、財政難にあるカルタゴには約束を履行するだけの金銭的余裕がない。
荒くれものたちから成る傭兵たちの不満はピークに達し、カルタゴのとある屋敷で傍若無人な饗宴を開いていたところ、その屋敷に住まう美しき乙女、サラムボーが姿を現す。
見る者すべてが魅了されるその美しさは、様々な幸不幸ももたらすに違いない・・・。

『サラムボー』に対しては、フローベールの客観的文体には時代背景を説明する語句が乏しいため、カルタゴの歴史等に関する予備知識がないとわかりにくいとの指摘がされているようだ。
また、町や部屋の様子、服装や宝飾品の描写が多いため、ストーリーがすらすら進んでくれることを期待する読者には不向きな作品かもしれない。
しかし、アングルやドラクロワの絵画を眺めているかのようなオリエンタリズム風の描写を楽しめる方には、『サラムボー』は無数の美的情景を与えてくれる、長く記憶に留まる傑作の一つとなることだろう。

現時点ではまだ全集でしか読むことのできない『サラムボー』には、付録としてサント=ブーヴへの手紙なども収録されている。
作品の質や内に秘めた魅力などを思えば、単行本化もしくは文庫本化されていないことが不思議でならないが、多少出版年の古い全集版とはいえ、『サラムボー』は訳文もとても読みやすいので、フローベールに興味のある方にはぜひ読まれることをお勧めしたい一冊だ。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク