『スペードの女王・ベールキン物語』 プーシキン(岩波文庫)

スペードの女王・ベールキン物語 (岩波文庫)スペードの女王・ベールキン物語 (岩波文庫)

書名:スペードの女王・ベールキン物語
著者:アレクサンドル・プーシキン
訳者:神西 清
出版社:岩波書店
ページ数:301

おすすめ度:★★★★★




詩人として紹介されることの多いプーシキンによる、代表的な散文作品を収録したのが本書『スペードの女王・ベールキン物語』である。
各々の単語の持つ音の響きなどがきわめて重要な意味を持つ詩作品と比べれば、散文作品の方がいっそう容易にロシア人が感じ取っているところのプーシキンの魅力に迫ることができるに違いない。
プーシキンに興味のある方には、『オネーギン』と合わせて、物語性の強い作品群である『スペードの女王・ベールキン物語』を強くお勧めしたいと思う。

『スペードの女王』は、主人公が賭場でトランプの絵札が笑うのを目撃するというところから始まる不可思議な物語だ。
非常に読みやすい文体で書かれており、筋書きの面白さだけで読者を引っ張っていってくれる作品でもあるので、古典的名作を読むのだという覚悟をすることなしに、読み物として純粋に楽しむことができるだろう。
幻想性に富んだ作風には、当時一世を風靡していたホフマン流の影響が見受けられ、また出版年が程近いゴーゴリの幻想的な作品への影響も察せられるなど、非常に時代性を感じさせる作品ともなっている。

一方、『ベールキン物語』は、「その一発」、「駅長」、「吹雪」など、5編の短編からなる短編集で、こちらもすべて非常に読みやすい作品だ。
『ベールキン物語』というくくりは与えられているものの、内容の結びついた明確な連作というわけではない。
それぞれの短編を比較して味わうのも興味深いはずなので、各々の読者は自らの嗜好に沿ってお気に入りの一作を見つけていただければと思う。

ロシア文学における名訳者として名高い神西清氏の翻訳による『スペードの女王・ベールキン物語』は、これまでに幾度も再版を重ねていて、さらには『オネーギン』同様、数年前に改版も行われたようである。
比較的短めの作品を集めた文庫本ということもあり、プーシキンの全作品の中で最もとっつきやすい一冊と言っても間違いではないように思う。
そしていまだに日本で多くの人に読まれ続けているということ自体が、本書の読みやすさ、面白さを何よりも如実に明かしていると言えるのではなかろうか。
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