『マリア・ストゥアルト』 シラー(岩波文庫)

悲劇マリア・ストゥアルト (岩波文庫 赤 410-6)悲劇マリア・ストゥアルト (岩波文庫 赤 410-6)
(1957/06/25)
シラー

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書名:マリア・ストゥアルト
著者:フリードリヒ・フォン・シラー
訳者:相良 守峯
出版社:岩波書店
ページ数:235

おすすめ度:★★★★




シラー後期の悲劇作品の一つがこの『マリア・ストゥアルト』だ。
日本ではあまりなじみのない名前である「マリア・ストゥアルト」にピンとこない方も多いだろうが、それが悲劇の女王メアリー・ステュアートのドイツ語読みであると聞けば、本書に興味の湧いてくる方も多いのではなかろうか。
ヴァレンシュタイン』と同様、史劇に分類される作品ではあるが、ヴァレンシュタインの物語よりエリザベスとメアリーの確執の方がはるかによく知られたエピソードであろうから、日本の読者にも受け入れられやすい作品ではないかと思う。

『マリア・ストゥアルト』は、虜囚の身に陥り死刑の宣告が下ったマリアの、最後の数日間に焦点を絞りこんでいる。
あとはエリーザベットが刑の執行を命じるだけという、生死の瀬戸際に立たされたマリアだったが・・・。
シラーの史劇はあくまで史実を題材とした戯曲であり、『マリア・ストゥアルト』においても劇的効果を演出するための創作部分が若干見られるようだ。
しかしそのような史実との相違こそ、戯曲家としてのシラーの意図が透けて見えるため、いっそう興味深い部分となってくるのではなかろうか。
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右は『マリア・ストゥアルト』においても重要な役割を果たすエリザベスを描いた映画『エリザベス:ゴールデン・エイジ』で、メアリー処刑のエピソードが比較的大きく取り上げられているため、『マリア・ストゥアルト』の関連作品として紹介したい。
近年の映画作品全般に共通して言えることだが、この『エリザベス:ゴールデン・エイジ』もエリザベスを単に剛毅で冷酷な女王としてとらえるのではなく、一個の人間としての弱みや逡巡をも含めて描き出されていて、どこかシラーと視点が近いようにも感じられる。
そういう意味では、シラーの人間観や歴史観は200年を経た現在のそれとさほど異なったものではないのかもしれない。

今日の読者が読んでも十分楽しめるはずのシラー作品の出版事情は、決して恵まれているとは言えない。
この『マリア・ストゥアルト』も中古でしか手に入らない状態が続いているが、シラーの戯曲家としての円熟した技量が存分に発揮された非常に読みごたえのある作品なので、シラーに興味のある方には強くお勧めしたい一冊だ。
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