『大尉の娘』 プーシキン(岩波文庫)

大尉の娘 (岩波文庫)大尉の娘 (岩波文庫)

書名:大尉の娘
著者:アレクサンドル・プーシキン
訳者:神西 清
出版社:岩波書店
ページ数:310

おすすめ度:★★★★★




プーシキン晩年の散文による長編小説がこの『大尉の娘』である。
『大尉の娘』が出版されて数か月後に、プーシキンは決闘の際に受けた傷ゆえにこの世を去ることになったため、『大尉の娘』は期せずしてプーシキン最後の作品となってしまった。
齢半ばで生を終えたプーシキンの場合、「円熟期」という表現は適当ではないかもしれないが、いすれにしても『大尉の娘』が非常に読み応えのある作品に仕上がっていることは間違いなく、プーシキンの全作品を見渡してみても、最も優れたものの一つに数えられるように思う。

『大尉の娘』は、その出版からさかのぼることおよそ60年前、皇帝に反旗を翻したプガチョフの乱を題材にした物語である。
多くの歴史小説の常で、『大尉の娘』も史実と創作とが混在しており、そこが文学作品としてのリアリティを強め、読者の興味を惹きつける点でもあるのだろうが、それらの長所を度外視してもなお、『大尉の娘』は面白く読める作品となっている。
人と人とが互いに引き寄せ合う力とそれを引き離そうとする力、控えめな「大尉の娘」と粗暴なコサック、そして生と死。
様々な対立軸の中で進んでいく物語は、読者の心をつかんで離さないに違いない。

文学作品の素材として、皇帝の圧政に反抗して兵を挙げたプガチョフを取り上げるというのは、それでなくとも権力筋からにらまれていたプーシキンにとっては、命懸けの綱渡りのようなものであったろう。
作品からはしばしば陰鬱な雰囲気が感じ取られることがあるが、ひょっとするとそれも晩年のプーシキンが置かれていた逆境が落とした影なのかもしれない。

私自身は古い版で読んだので新しいものは確認していないのだが、岩波文庫版の『大尉の娘』は2006年に改版となり、いっそう読みやすくなったようだ。
『大尉の娘』であればそれだけ読者を獲得できるものと考えられてのことだろうが、その判断は誤っていないように思う。
プーシキンに興味のある方であれば必ずや押さえておきたい作品であるし、プーシキンの作品に初めて接するという方にもお勧めの一冊だ。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク