『青銅の騎士』 プーシキン(ロシア名作ライブラリー)

青銅の騎士 (ロシア名作ライブラリー)青銅の騎士 (ロシア名作ライブラリー)

書名:青銅の騎士 モーツァルトとサリエーリほか
著者:アレクサンドル・プーシキン
訳者:郡 伸哉
出版社:群像社
ページ数:189

おすすめ度:★★★★




表題作のほかに、『モーツァルトとサリエーリ』、『石の客』などから成る戯曲集『小さな悲劇』を合わせて訳出したのが本書『青銅の騎士』である。
『青銅の騎士』はプーシキンの物語詩の中では代表的なものに数えられるし、小品を集めた『小さな悲劇』も、モーツァルトの毒殺説やドン・ファン伝説といったたいていの読者が強く引き付けられるテーマを扱っているので、プーシキンの戯曲や物語詩の方面に興味のある方には非常にお勧めだ。

「青銅の騎士」とは、サンクト・ペテルブルグの建設者であるピョートル大帝の騎馬像を指している。
大規模な洪水が頻発するという、地理的には決して都市を構えるのに好適ではない位置に築き上げられたペテルブルグの、洪水にまつわる悲しい物語が『青銅の騎士』である。
相手が騎馬像とはいえ、今は亡き皇帝の姿をかたどったものであるから、詩人がその騎士に対して言及する際にも、厳しい検閲の目にさらされていたプーシキンの筆に自由奔放さを望むことはできないが、悲哀の色調は見事に描き出されていて十分読み応えがある。

プーシキンが生前にまとめて出版したというわけではないにせよ、慣例として『小さな悲劇』と呼ばれている作品群は、『モーツァルトとサリエーリ』、『ペスト蔓延下の宴』、『けちな騎士』、『石の客』の4編から成っている。
『モーツァルトとサリエーリ』はモーツァルトの毒殺疑惑をテーマにしたもの、『ペスト蔓延下の宴』はそのタイトルのとおりペストが流行する下で遊び呆ける人々を描いたもの、『けちな騎士』は金銭がらみの親子の不和を主題としたもの。
そして『石の客』は伝説的なスペインの遊蕩貴族ドン・ファンを扱ったもので、モリエールの『ドン・ジュアン』と合わせて読まれることを強くお勧めしたい作品だ。
いずれも数十ページという短いものなのでさらりと読み終わってしまうが、おそらく読者はすべての悲劇に共通する諧調のようなものを感じ取り、しみじみとした気持ちにさせられるのではなかろうか。

『青銅の騎士』はかつて岩波文庫からも出されていたが、訳文も少々古く、まして新品は流通していないのが現状だ。
その点、これまであまり読みやすいかたちで訳出されることのなかった『小さな悲劇』と合わせて一冊になっている本書は、プーシキンに興味のある方には歓迎される本であるに違いない。
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