『ボリス・ゴドゥノフ』 プーシキン(岩波文庫)

ボリス・ゴドゥノフ (岩波文庫)ボリス・ゴドゥノフ (岩波文庫)

書名:ボリス・ゴドゥノフ
著者:アレクサンドル・プーシキン
訳者:佐々木 彰
出版社:岩波書店
ページ数:136

おすすめ度:★★★★




散文、詩、戯曲など、様々な分野で幾多の傑作を残したプーシキンだが、そんな彼の戯曲方面における代表作が史劇であるこの『ボリス・ゴドゥノフ』だ。
舞台となっている時代は1600年前後と、日本でいえばちょうど戦国時代から江戸幕府へと連なる戦乱期だが、その頃ロシアも帝位が大きく揺らぐ動乱時代を迎えていた。
ゴドゥノフ家をめぐる帝位争奪戦は、日本でよく知られたテーマであるとは言えないだろうが、それだけにプーシキンが盛り込んだ理念を読み解くだけでなく、戯曲自体の展開がどうなるのかも含めて大いに楽しめる作品になっているように思う。

本来の帝位継承者の殺害を命じたことが広く知れ渡っているという、いわく付きの帝位に収まっているボリス・ゴドゥノフ。
皇帝の位に就いて数年の時が流れていたある日のこと、死んだはずの帝位継承者を名乗る男が姿を現し、ゴドゥノフ朝を転覆せんとモスクワに向けて進軍を開始する・・・。
皇帝や貴族、軍人や聖職者から果ては平民に至るまで、皇帝と「帝位継承者」を取り巻く人々の思惑の入り乱れる様が描かれているが、それでいて一つの戯曲としては非常によくまとまっているのではなかろうか。

『ボリス・ゴドゥノフ』は、他の作家の戯曲と比べると場面がとても細かく割られていて、場面は宮殿から戦場へ、モスクワからポーランドへとめまぐるしく転々とすることになるが、登場人物の台詞に冗長さは見られず、劇としてのスピード感は随一である。
もし『ボリス・ゴドゥノフ』を実際に舞台にかけるとなると、そのスピード感を失うことなく上演するのは至難の業であるに違いなく、演出家の腕の見せ所となることだろう。
プーシキンの『ボリス・ゴドゥノフ』を基に、ムソルグスキーがオペラ化した作品もあるようなので、興味のある方はそちらも鑑賞いただければと思う。

プーシキンにとっては珍しくないテーマである皇帝への反抗を扱った『ボリス・ゴドゥノフ』は、執筆当時、検閲をパスすることができず、初演の日を迎えるには数十年の時が必要であったらしい。
中古でしか手に入らない本ではあるが、プーシキンの問題作の一つとして、プーシキンに興味のある方には強くお勧めしたい作品だ。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク