『空の旅』 ヘルマン・ヘッセ(ゼスト)

空の旅空の旅
(1999/04)
ヘルマン ヘッセ

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書名:空の旅
著者:ヘルマン・ヘッセ
訳者:天沼 春樹
出版社:ゼスト
ページ数:180

おすすめ度:★★☆☆☆




ヘッセの残した随想や詩などをテーマ別に編んだフォルカー・ミヒェルスによるヘッセのアンソロジーの一冊がこの『空の旅』である。
生身の人間を置き去りにして突き進んでいく文明社会に警鐘を鳴らしていたヘッセにしてはやや意外なことに思われるかもしれないが、その安全性が多くの人々から危惧されている時代に、彼はきわめて積極的に飛行船や飛行機に乗って空を旅していた。
その時の体験を綴ったものを中心に編まれた作品が本書『空の旅』だ。

空に、そして雲に強く憧れ続けたヘッセは、命の危険を冒して空に挑むパイロットたちに、詩人と同様、未知の領域に踏み込む冒険者としての親近感を持っていたようである。
上空から下界を見下ろすヘッセの口から洩れるいくらかとげのある言葉も、いかにもヘッセらしいと言えるのではなかろうか。

本書のお勧め度を★★と、やや低めの評価にせざるをえないのは、ヘッセの執筆部分がきわめて少ないという一事によっている。
全体で180ページの本書において、ヘッセのエッセイや詩を訳出した部分は50ページそこそこしかなく、そこに原著の編者であるミヒェルスの「飛行機に乗ったヘルマン・ヘッセ」というヘッセと空とにまつわるエピソードを紹介した文章と訳者のあとがきが続き、そして最後に、とはいっても割合から言えばそれは本書のおよそ半分を占めるのだが、飛行船のパイオニア的存在であるツェッペリン伯に関して訳者が物した「ツェッペリン年代記」が掲載されているといった具合で、どこかフェルメールの作品が一点しか来日していないフェルメール展のような印象を受ける本なのである。
フェルメール展の場合はフェルメールの作品がほとんど来ていないことを見に行く人が事前に予想できるだろうが、著者の名にヘルマン・ヘッセを戴いている本書の場合、ヘッセの手になる文章の少なさは読者を大いに失望させるのではなかろうか。

『空の旅』は現在、アマゾンで非常に手頃な値段で中古品が売られてはいるが、空に対しての憧れやその美しさをテーマとしたヘッセのアンソロジーをお探しの方には、同じくミヒェルスの編集による『』の方を強くお勧めしたいと思う。
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