『闇を讃えて』 ボルヘス(水声社)

闇を讃えて闇を讃えて
(2006/07)
ホルヘ・ルイス ボルヘス

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書名:闇を讃えて
著者:ホルヘ・ルイス・ボルヘス
訳者:斎藤 幸男
出版社:水声社
ページ数:177

おすすめ度:★★★☆☆




ボルヘス晩年の詩集の一つがこの『闇を讃えて』だ。
詩集とは言っても詩作品のみから成るものではなく、いくつか散文作品も織り交ぜられている。
時事問題に即したビビッドなテーマを扱った作品も散見されるため、ボルヘスの詩集にしてはやや強く時代性が打ち出されているのが特徴の一つであるように思う。

『闇を讃えて』は、表題ともされている「闇を讃えて」の他、三十数編を収録した詩集となっている。
ボルヘス自身も序において認めているように、『闇を讃えて』には鏡、迷宮、剣といったボルヘスにとっておなじみのモチーフが多々表れている。
そして迷宮、福音書、イスラエルに関する作品が複数存在しているので、それらのテーマが特に印象に残りやすいのではなかろうか。

本書の構成に関して言うと、実際の詩集は140ページ程度で、それに続いてボルヘスの研究者による「闇を讃えるボルヘス」という論文が訳出されていて、最後に訳者のあとがきで締めくくられている。
文字のサイズも大きく、それほど文章量が多くないために、読みやすい本であることは確かだが、少々あっけない感じがする読者もいるかもしれない。
ボルヘスの詩の世界を覗いてみたい方には『永遠の薔薇・鉄の貨幣』の方をよりお勧めしたい。
こちらは二冊の詩集を一冊にまとめて翻訳・出版されたものであることに加え、いっそうボルヘスらしさの出ている詩集でもあるので、おそらく多くの方々にとって『闇を讃えて』より読み応えがあるのではなかろうか。
そうはいっても、何も本書『闇を讃えて』の価値を低く見積もっているわけではないし、一冊の本として十分面白いことは間違いないと思う。

年々視力を失っていったボルヘスらしいタイトルの付された『闇を讃えて』。
ボルヘスのファンにはうれしいことに、21世紀に入ってもボルヘス作品の翻訳の出版が続いているが、それらのうちの一冊である『闇を讃えて』は、ボルヘスの詩に興味のある方であれば要チェックの本といえるのではなかろうか。
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