『エバリスト・カリエゴ』 ボルヘス(国書刊行会)

エバリスト・カリエゴエバリスト・カリエゴ
(2002/02)
ホルヘ・ルイス ボルヘス

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書名:エバリスト・カリエゴ
著者:ホルヘ・ルイス・ボルヘス
訳者:岸本 静江
出版社:国書刊行会
ページ数:201

おすすめ度:★★★☆☆




ブエノスアイレスの場末をうたった詩人、エバリスト・カリエゴにまつわるエッセイを中心に編まれた作品が、この『エバリスト・カリエゴ』だ。
エバリスト・カリエゴのことを本書による紹介に接する以前から知っていたという方は日本ではきわめて少ないように思うが、本書はエバリスト・カリエゴのことをあらかじめ知らないと楽しめないかというと必ずしもそうではない。
というのも、エバリスト・カリエゴの生涯や作風に関する説明がきっちりとなされているだけでなく、カリエゴには直接的に関係のないタンゴやナイフの話もけっこうな紙幅を割いて収録されているので、私などはむしろ本書の『エバリスト・カリエゴ』というタイトルの方に違和感を覚えたほどで、読後感としては、詩人としてのカリエゴうんぬんよりも、ブエノスアイレスの場末の雑然とした印象の方が強く残っている。
いずれにしても、『エバリスト・カリエゴ』はボルヘスの作品の中でも特にアルゼンチン色の濃い一冊であると断言することができる。

本書『エバリスト・カリエゴ』には、エバリスト・カリエゴの伝記的記述や彼の詩作品に対する批評に続いて、後半部分ではアルゼンチンの、ひいてはブエノスアイレスの象徴的事物についての論考が収められている。
それらをカリエゴの話からの脱線ととらえることも可能だろうが、一冊の本として振り返ってみると、読者は本書が奇妙なまとまりを見せていることに気付かされるのではなかろうか。
カリエゴの生きた場所と時代が決して身近なものではない今日の日本の読者にとっては、アルゼンチンの雰囲気を如実に伝えてくれるボルヘスの蛇足とも言うべきエッセイも、大いに歓迎すべきものとなるように思う。

『エバリスト・カリエゴ』は、『伝奇集』や『エル・アレフ』のような作品を期待している読者を確実に裏切ることだろう。
本書を楽しめるのは、『ブロディーの報告書』などといったボルヘスのアルゼンチンを舞台にした作品を好まれる方か、アルゼンチン人としてのボルヘスを知りたいという方、そして言うまでもなくボルヘスのファンの方ということになるように思う。
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