『汚辱の世界史』 ボルヘス(岩波文庫)

汚辱の世界史 (岩波文庫)汚辱の世界史 (岩波文庫)
(2012/04/18)
J.L.ボルヘス

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書名:汚辱の世界史
著者:ホルヘ・ルイス・ボルヘス
訳者:中村 健二
出版社:岩波書店
ページ数:192

おすすめ度:★★★★




ボルヘス最初の短編集が、古今東西よりボルヘスの関心を引いた七人の悪人を集め、ボルヘス流に紹介したこの『汚辱の世界史』である。
かつて晶文社から『悪党列伝』という表題で出版されていたものがこの度岩波文庫入りしたということで、タイトルもより原題に寄せたものとされたようだ。
悪人たちの生涯や悪行がきわめてストレートな筆致で描かれており、難解さはまったく感じられないので、気軽に読んでみてもいいのではなかろうか。

『汚辱の世界史』で取り上げられている悪党は、ラザラス・モレル、トム・カストロ、鄭夫人、モンク・イーストマン、ビリー・ザ・キッドの名で知られるビル・ハリガン、吉良上野介、メルヴのハキムの七名である。
日本人にはたいへんなじみの深い吉良上野介に一章が割かれていることを知れば、本書の表紙で用いられている図版にも大いに納得がいくことだろうし、同時にまた、ボルヘスの集めた悪党たちが単に血も涙もない残酷な人間たちばかりでないことにも気付かれることだろう。
実際、七人の悪人たちの中には、ギャングや海賊の頭領のみならず、詐欺師もいれば宗教がかった扇動者もいるといった具合で、本書には『悪党列伝』というタイトルよりもやはり『汚辱の世界史』の方がいっそうふさわしいように思われる。

『汚辱の世界史』には、「薔薇色の街角の男」と、「エトセトラ」と題された小編群も添えられている。
いずれも短いものであるとはいえ、いかにもボルヘスらしいテーマを扱ったものなので、ボルヘスのファンであれば満足を覚えながら読み進めることができるのではなかろうか。

『汚辱の世界史』で紹介されている汚辱の元凶たちは、ビリー・ザ・キッドと吉良上野介を除けばあまり知られていない「悪党」が多いので、ボルヘスという作家にそれほど興味のない人でさえそこそこ楽しむことができる一冊であるように思う。
そしてもちろん、ボルヘスの本が文庫化されるのを待ち望んでいた人々をも必ずや満足させるに違いない。
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