『ラブイユーズ』 バルザック(藤原書店)

ラブイユーズ―無頼一代記 (バルザック「人間喜劇」セレクション)ラブイユーズ―無頼一代記 (バルザック「人間喜劇」セレクション)
(2000/01)
バルザック、Balzac 他

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書名:ラブイユーズ
著者:オノレ・ド・バルザック
訳者:吉村 和明
出版社:藤原書店
ページ数:473

おすすめ度:★★★☆☆




人間喜劇「地方生活情景」に収められている長編小説がこの『ラブイユーズ』。
パリが舞台になっているシーンも多いが、田舎で起きる出来事に重点を置いているという点は『幻滅』などと同様だ。

「ラブイユーズ」とは一人の女のあだ名だが、必ずしも彼女を中心に話が進んでいくというわけではなく、どちらかというと本編の主人公はフィリップという破天荒な生き方をしている軍人である。
そういうわけで、本作には「無頼一代記」という副題があてがわれているのだろう。
豪胆で不道徳な荒くれ男の振る舞いを読んでいると、バルザックの時代からさらに一昔さかのぼったピカレスク小説を思い起こす読者もいるのではなかろうか。

ピカレスク風の小説を書いていても、そこに遺産相続問題を絡ませてくるあたり、やはりバルザックの作品だなと感じることができる。
親切な代訴人のアドバイスがあり、実のない女に惚れ込む男まで登場するとあっては、各ページにバルザックの署名がしてあるようなものだ。
そういう意味では、『ラブイユーズ』をバルザック風ピカレスク小説ととらえてもいいのかもしれない。

しかし、フィリップの活躍の後でも、とはいえ彼が『ラブイユーズ』の中でなしたことを活躍と呼んでよければの話だが、いずれにしても、散々活躍した主人公を読者はどうにも好きになれないまま小説が終わるように思う。
人情味の乏しいフィリップは決して人好きのするたちの男ではないし、かといって悪者としてさほどのインパクトがあるわけでもなく、強いて言えばせこい小悪党とでもいったところだろうか。
起伏に富んだストーリー自体はなかなか楽しめるのだが、バルザックの作品への期待値が高いだけに、いくらか物足りない印象を受ける作品だ。
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