『動物寓話集 他』 バルザック(水声社)

動物寓話集 他 (バルザック幻想・怪奇小説選集)動物寓話集 他 (バルザック幻想・怪奇小説選集)

書名:動物寓話集 他
著者:オノレ・ド・バルザック
訳者:私市保彦、大下祥枝
出版社:水声社
ページ数:296

おすすめ度:★★☆☆☆




水声社の『バルザック幻想・怪奇小説選集』の第五巻に当たるのがこの『動物寓話集 他』である。
表題作である『動物寓話集』の他に、『魔王の喜劇』と『廃兵院のドーム』を収録しているが、いずれもバルザックの小説の集大成である「人間喜劇」には収められておらず、あまり注目を浴びることのない作品によって編まれた一冊であるといえる。
典型的なバルザックらしい作品を集めた本であるとは言いがたいので一般受けは望めないが、バルザックの幻想性や風刺性は色濃く感じられるため、広範な作品世界を持つバルザックの小説を、テーマを絞って読みたい方にはお勧めできる。

バルザックが『動物寓話集』という表題を冠しうる作品を物していたということに、意外の念を抱かれた方も少なくないに違いない。
しかし、教訓に富んだ作品として知られるラ・フォンテーヌの『寓話』とはまったく毛色が異なり、動物たちの口を借りてイギリス社会やアカデミーの学者たちなどが徹底的に風刺されている点からは、バルザックらしさを感じ取ることができるのではなかろうか。

バルザックの作品の中で、『魔王の喜劇』ほど混沌としたイメージを与える作品も少ないはずだ。
登場人物の入れ替わりが激しく、あたかも万華鏡でも覗いているかのような作品であるが、もし読者がそのような錯覚に陥ったとすれば、それはバルザックの思うつぼということなのだろう。
幻想的な小編である『廃兵院のドーム』のほうはというと、これは視界の悪い霧の中をぼんやりと歩いていくような作品である。
作品自体はきわめて短いので、一語一語に注意を払えばそれだけ深く味わえるのかもしれない。

水声社の選集には多数の挿絵があって読者の目を楽しませてくれるが、この『動物寓話集 他』は他と比べてもその挿絵の枚数が非常に多いのが特徴となっている。
その分読みやすい本という印象こそ受けるが、内容にはかなりの偏りがあるため、すでにバルザックの作品を何冊も読まれているバルザックファンにのみお勧めしたい一冊だ。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク