『花・死人に口なし 他7篇』 シュニッツラー(岩波文庫)

花・死人に口なし 他7篇 (岩波文庫)花・死人に口なし 他7篇 (岩波文庫)

書名:花・死人に口なし 他7篇
著者:アルトゥル・シュニッツラー
訳者:番匠谷英一、山本有三
出版社:岩波書店
ページ数:300

おすすめ度:★★★★




表題作である『花』や『死人に口なし』などを含む全九篇を収めたシュニッツラーの短編集がこの『花・死人に口なし 他7篇』である。
収録作品の大半がシュニッツラーの作風を非常によく伝えるものであるうえに、一つ一つの作品を取り上げてもたいへん読み応えがあるため、『シュニッツラー傑作選』と名付けてもよいほどの一冊だと思う。
シュニッツラーを知る人も知らない人も楽しめる作品集として、幅広い読者層にお勧めしたい。

本書の収録作品の内訳は、『花』、『わかれ』、『死人に口なし』、『盲目のジェロニモとその兄』、『アンドレーアス・タマイアーの最後の手紙』、『ギリシャの踊り子』、『新しい歌』、『レデゴンダの日記』、『情婦殺し』となっている。
たいていはきわめてシュニッツラーらしい作品、すなわちねじれを帯びた男女の恋愛関係をテーマにしたものとなっているが、『花』のように幻想性を加味されているものや、『盲目のジェロニモとその兄』のように別種の愛憎を扱ったものもあり、読者はそれぞれの作品を個別に楽しむだけではなく、同時に分析欲や知的好奇心をも強くくすぐられることだろう。

本書の収録作品のうち、『花』と『ギリシャの踊り子』にいたっては、かつては個別に岩波文庫の表題となっていた作品である。
そういう意味では、本書『花・死人に口なし 他7篇』において以前は二冊だったものが一冊にまとめられたわけで、たいへんお得な一冊であるとも言えるはずだ。
中には訳文を多少古めかしく感じられる読者もいるかもしれないが、たいていの読者はそれほど気になることもないように思う。

シュニッツラーの描く巧みな心理世界は、登場人物にも作品にも見事な息吹を与えている。
そしてその特徴が顕著に表れているのが本書であろう。
これまでシュニッツラーにさほど関心がなかった方も、この『花・死人に口なし 他7篇』から始めてみてはいかがだろうか。
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