『輪舞』 シュニッツラー(岩波文庫)

輪舞 (岩波文庫)輪舞 (岩波文庫)

書名:輪舞
著者:アルトゥル・シュニッツラー
訳者:中村 政雄
出版社:岩波書店
ページ数:128

おすすめ度:★★★★




小説家としてのみならず、一流の戯曲作家としても活躍していたシュニッツラーの代表的な戯曲の一つがこの『輪舞』である。
19世紀末のウィーンを生きたシュニッツラーの作品は、どことなく物悲しい雰囲気を帯びていることが多いが、一見喜劇的な作品であるこの『輪舞』にも、その背面からは哀愁の趣がにじみ出てきているように感じられる。
作家活動において男女関係をテーマとして選び続けてきたシュニッツラーらしい作品なので、シュニッツラーに興味のある方にはぜひ一読をお勧めしたい。

『輪舞』の登場人物の幅は広い。
それでいて、すべての登場人物が見事な調和を保ちながら一つの戯曲を織り成している。
明確な主人公もいなければ、誰が脇役というわけでもない。
『輪舞』の最大の特徴は、おそらくはその構成にあるのだろう。
それだけ技巧的・人工的な観が強い作品であるといえるが、その反面、さほど長い作品ではないにもかかわらず、読者の印象に残りやすい戯曲であるともいえるはずだ。

Amazonでは表紙の画像が掲載されていないようだが、岩波文庫の『輪舞』の表紙にはクリムトの『接吻』が用いられている。
同時代のウィーンで活躍したクリムトの代表作、しかもそのテーマが見事に重複しているとあって、なかなか優れた選択であると感心したのは私だけではないのではなかろうか。
現在『輪舞』の新品はほとんど出回っていないようだが、もし中古品にカバーが付けられておらず、『接吻』なしの『輪舞』を読むことになるとすれば、少々残念なことである。

『輪舞』は、不道徳な作品として裁判沙汰にまでなったという、文学史上における数ある問題作の一つでもある。
難解さはまったく感じられず、たいへん読みやすい作品なので、ぜひ気軽に手にしていただければと思う。
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