『アテネのタイモン』 シェイクスピア(白水Uブックス)

シェイクスピア全集 (〔32〕) (白水Uブックス (32))シェイクスピア全集 (〔32〕) (白水Uブックス (32))

書名:アテネのタイモン
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:小田島 雄志
出版社:白水社
ページ数:181

おすすめ度:★★☆☆☆




シェイクスピアの全戯曲の中でも特に謎が多く、なおかつかなりマイナーな部類に入る作品がこの『アテネのタイモン』である。
筋書きに脱落と思しき点や不整合な部分が残っているなど多少の混乱が見られ、未完成であるとの見方が支配的な作品であるため、一般の読者向けというよりはやや玄人向けという印象が強い作品でもある。
たいていは悲劇として紹介されているようだが、そこに異を唱えることも可能であろうし、無限の読み解き方を秘めた一冊と言っていいかもしれない。

豪勢な暮らしを続け、困っている人には相手構わず救いの手を差し伸べ、友人たちには惜しげもなく贈り物をし、多くの人々に慕われているアテネの名士、タイモン。
しかし、何事も度を過ぎて行えばすぐに限界がやってくるもの。
無尽蔵と思われていたタイモンの財産にしても、彼の浪費にいつまでも持ちこたえられるわけはなく・・・。
境遇の良し悪しに応じて、タイモンの性格は同じ人物とは思えないほどの豹変ぶりを見せる。
いくらか誇張が過ぎるような気がしないでもないが、やはり彼の言動は劇を通して読者を引きつけて離さないことだろう。

『アテネのタイモン』のストーリー展開には、どこか『リア王』を思わせるところがある。
しかし、タイモンはリア王ほどには劇の主人公としての魅力やインパクトが感じられないし、タイモンが陥った不幸を目の当たりにしても、読者はタイモンの自業自得だと感じるのが普通ではなかろうか。
知名度や入手の容易さからいっても、やはり『リア王』をお勧めしたいというのが私の本音だ。

『アテネのタイモン』は、読者の心に訴える作品というよりは、理性に働きかけるという性格が勝っているのかもしれない。
そういう意味では、シェイクスピアの異色作に関心のある方にお勧めの一冊だ。
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