『コリオレーナス』 シェイクスピア(白水Uブックス)

シェイクスピア全集 (〔31〕) (白水Uブックス (31))シェイクスピア全集 (〔31〕) (白水Uブックス (31))

書名:コリオレーナス
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:小田島 雄志
出版社:白水社
ページ数:266

おすすめ度:★★★★




四大悲劇を物した後に書かれた、シェイクスピア後期の悲劇作品の一つがこの『コリオレーナス』である。
ローマの史実に題材を得たいわゆる「ローマもの」であるため、悲劇としてのみならず歴史劇としての性格も備えているので、それだけ幅広い読者層を楽しませることができるのではないかと思う。
ジュリアス・シーザー』や『アントニーとクレオパトラ』と比較してみるのも興味深い読み方になるはずだ。

ローマ軍を連戦連勝に導く、剛毅に満ちた武人、コリオレーナス。
粗野な振る舞い、プライドの高さに加えて、傲慢にも平民を軽視した発言を繰り返しているため、どれだけローマのために体を張って尽くそうと、平民からの支持は必ずしも安定的なものではなかった。
そんな中、コリオレーナスに反感を持つ護民官たちは、平民を扇動し、彼を失墜させようと企て・・・。
印象的な登場人物が複数存在しているために劇の展開は自ずと読者を引き込むだろうし、全体的に政治思想すらにじみ出ているために、独特の深みがある作品に仕上がっているように思う。
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『コリオレーナス』は、現在随時刊行中の文庫によるシェイクスピア全集であるちくま文庫版も既刊となっている。
白水Uブックスと価格はさほど変わらないので、こちらも同様にお勧めできる。
また、『コリオレーナス』は右に示す映画『英雄の証明』の原作にもなっており、現代風にアレンジされているこの映像化作品も本書の読者には興味深いのではないかと思う。

悲劇作品の主人公は、単に不運が重なるだけではなく、ある程度はその悲運の種を自らの手で蒔くことによって、悲劇的運命の度合いを増していくものだ。
では、コリオレーナスは何を誤ったのか、何に対して妥協をするべきだったのか、それともしないべきだったのか、読者によって意見は分かれるだろう。
作品の知名度はさほど高くないし、幕切れにあっけなさを感じる読者もいるかもしれないが、さすがは円熟期のシェイクスピア作品だけあり読み応えは十二分。
シェイクスピアの隠れた名作探しをしている方にお勧めの一冊だ。
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