『コサック: 1852年のコーカサス物語』 トルストイ(光文社古典新訳文庫)

コサック―1852年のコーカサス物語 (光文社古典新訳文庫)コサック―1852年のコーカサス物語 (光文社古典新訳文庫)

書名:コサック: 1852年のコーカサス物語
著者:レフ・トルストイ
訳者:乗松 亨平
出版社:光文社
ページ数:377

おすすめ度:★★★★




そのタイトルのとおり、コサックの集落を舞台に描かれた長編小説がこの『コサック』である。
同じロシアの版図内に暮らしているとはいえ、たいていのロシア人とまったく異質な存在であるコサックは、ロシア文学のテーマとして一大源泉となっているのだが、それをトルストイがどのように扱うのかは大いに注目に値するのではなかろうか。
文庫本という手頃さもあり、幅広い読者層にお勧めできる一冊だ。

『コサック』の主人公は、従軍するためにモスクワからコーカサスに赴いた良家の一青年である。
モスクワでは考えられないような生活が送られているコサックの集落で、兵士や猟師との出会いが彼の魂を揺さぶり続ける。
そして下宿の美しい娘との出会いも、彼の人生、価値観に大きな変化をもたらして・・・。
トルストイの多くの作品でそうであるように、この『コサック』にも自伝的な要素がふんだんに盛り込まれているようなので、トルストイに詳しい人であれば、主人公とトルストイとを重ね合わせたり切り離したりしながら読むのも面白いかもしれない。

戦争と平和』や『アンナ・カレーニナ』といった世界文学における屈指の名作を残しているトルストイだけに、本書『コサック』はどうしてもその影が薄くなってしまっている。
しかし、プーシキンの『大尉の娘』、ゴーゴリの『隊長ブーリバ』、ショーロホフの『静かなドン』など、一連のコサックを取り扱った作品を知っている読者にとっては、トルストイのコサックものはやはり強く興味をそそられるだろうし、それらの作品を読む前にコサックとは何かを教えてくれるトルストイの『コサック』を読んでおくのもいいかもしれない。
一つの作品として楽しむだけでなく、ロシア文学の中での時間的・空間的なつながりをも楽しんでいただきたい、そんな作品だ。
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