『奴婢訓』 スウィフト(岩波文庫)

奴婢訓 (岩波文庫)奴婢訓 (岩波文庫)

書名:奴婢訓
著者:ジョナサン・スウィフト
訳者:深町 弘三
出版社:岩波書店
ページ数:122

おすすめ度:★★★☆☆




風刺の筆を執らせれば右に出るものなしのジョナサン・スウィフトによる、風刺と皮肉に満ちた作品がこの『奴婢訓』である。
『奴婢訓』というタイトルがかしこまった古めかしい感じを醸し出してはいるが、原題は"Directions to Servants"であり、スウィフトが使用人の心得を書いたものとでもいったところだ。
もちろん一筋縄ではいかないのがスウィフトの作品。
読者をいい意味ではぐらかしてくれるに違いない。

『奴婢訓』の読者は、おそらくその1ページ目から驚かされることになる。
何しろスウィフトが召使いたちに対して瞞着や怠慢、金銭的・物質的利益の追求を大真面目に推奨し始めるのだから。
スウィフトが例示し、その実践を要求するごまかしやまやかしの数々に、ついほくそ笑んでしまうのは私だけではないだろう。

『奴婢訓』には、『貧家の子女がその両親並びに祖国にとっての重荷となることを防止し、かつ社会に対して有用ならしめんとする方法についての私案』という、何とも長大なタイトルの小品も併録されている。
10ページ程度の非常に短い作品だが、その風刺の痛烈さには定評があるらしい。
スウィフトの提案する前代未聞の解決法は読者を驚かせることだろうが、風刺が鋭すぎて読む者が心地よささえ感じてしまう、そんな読み応えのある小品に仕上がっている。

本書『奴婢訓』の難点を挙げるとすれば、『奴婢訓』自体が未完の作品であることと、仮名遣いが古いことがある。
未完であることはやむをえないし、未完にもかかわらず十分面白いのが『奴婢訓』なのであるが、仮名遣いが古いとやはり一般受けは望めない。
知らぬ者とてない『ガリヴァー旅行記』の作者であるスウィフトの手になる作品であるだけに、いつの日か改版が出されることに期待したいと思う。
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