『イスラエル・ポッター―流浪五十年』 メルヴィル(八潮版・アメリカの文学)

イスラエル・ポッター―流浪五十年 (八潮版・アメリカの文学)イスラエル・ポッター―流浪五十年 (八潮版・アメリカの文学)

書名:イスラエル・ポッター―流浪五十年
著者:ハーマン・メルヴィル
訳者:原 光
出版社:八潮出版社
ページ数:252

おすすめ度:★★★★




メルヴィル後期の長編作品の一つがこの『イスラエル・ポッター―流浪五十年』だ。
必ずしもメルヴィルが全精力を傾けて書いた作品というわけではないようだが、波乱に富んだ生涯を送ったイスラエル・ポッターの歩んだ道筋は、読めば読むほどに読者の関心を強めるに違いない。
歴史はおろか、同時代人にさえほとんど顧みられることのなかった一人の無名の男にスポットライトを当てるというメルヴィルの手法も、多くの読者の共感を呼ぶのではなかろうか。

アメリカの野育ちであるイスラエル・ポッターは、アメリカの独立戦争という時代の大波に飲み込まれてしまっていた。
武骨でこそあれ、勇気もあり正直者であるイスラエル・ポッターの紆余曲折に触れているうちに、読者は自ずと数奇な運命に翻弄され続けるイスラエル・ポッターの応援をしてしまうことだろう。
イスラエル以外にも、ベンジャミン・フランクリンやポール・ジョーンズといった存在感ある英雄的人物が登場し、しばしばイスラエルをしのぐ活躍を見せているので、メルヴィルの描く彼らも本書の読みどころの一つとなっている。

主人公イスラエル・ポッターが流浪している最中にも、船に乗っているシーンは数多く登場する。
というより、『イスラエル・ポッター』の最も緊迫感のあるシーンは船上、もしくは海上であるといってもいいかもしれない。
読者は『白鯨』や『ビリー・バッド』を思い出させるような、いかにもメルヴィルらしい記述をふんだんに見出すことができるだろう。

明確なモデルの存在する『イスラエル・ポッター』の場合、どこまでが事実でどこからが創作なのかは一読しただけでは判断が難しいが、少なくともメルヴィルによる独特の筆致は誰もが感じ取ることがえきるはずだ。
仮名遣いの古めかしさに抵抗のある読者もおられるかもしれないが、メルヴィルに関心のある方はぜひ手にしてみていただきたい。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク