『おかしな人間の夢』 ドストエフスキー(論創ファンタジー・コレクション)

おかしな人間の夢 (論創ファンタジー・コレクション)おかしな人間の夢 (論創ファンタジー・コレクション)

書名:おかしな人間の夢
著者:フョードル・ドストエフスキー
訳者:太田 正一
出版社:論創社
ページ数:118

おすすめ度:★★★★




あまり知られていないドストエフスキーの作品があるとすれば、この『おかしな人間の夢』こそがその一つだろう。
「論創ファンタジーコレクション」というシリーズのうちの一冊として刊行されており、事実、半ば幻想的でいて、その反面やけに現実的でもある、いわく言い難い夢の世界が描かれている作品だ。

『おかしな人間の夢』は、周囲からは気違い扱いを受けている、自殺願望のある男が主人公だ。
そんな彼が、今日こそは自らの命を絶とうと、ピストルを前にしたのだったが・・・。
綿々と綴られる陰鬱な自意識にはいかにもドストエフスキーの筆を感じさせるものがあり、ドストエフスキーの作品を好きな方がこの「夢」を楽しめないはずはないと思う。

『おかしな人間の夢』は後期に書かれた作品であるため、後期の長編作品群、具体的に言えば『悪霊』や『罪と罰』との連関性が強いのが特徴だ。
『おかしな人間の夢』を読むことでそれらの作品への理解が深まるといえば少々言い過ぎかもしれないが、本書に触れることで読者は少なくとも後期のドストエフスキーの頭を占めていた思考やイメージのいくつかを把握できることだろう。

論創社によって日本で初めて単行本化されたという『おかしな人間の夢』だが、文章量自体は少なく、これはあくまで短篇小説だ。
文字サイズも大きいし、イラストも多数加えられているので、ドストエフスキーの作品を読みたい読者にとっていくらか割高な本であることは事実だろう。
そうはいっても、ドストエフスキーの、特に後期の作品ということであればその価値は計り知れないものがある。
訳者の太田氏も述べられているが、そもそも『おかしな人間の夢』があまり脚光を浴びていないのが不思議なぐらいで、ドストエフスキーのファンの方はぜひ本書を手にしていただければと思う。
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