『ロランの歌』 (岩波文庫)

ロランの歌 (岩波文庫 赤 501-1)ロランの歌 (岩波文庫 赤 501-1)

書名:ロランの歌
著者:作者不詳
訳者:有永 弘人
出版社:岩波書店
ページ数:291

おすすめ度:★★★★★




武勲詩というジャンルの中では最も有名かつ重要な位置を占める作品がこの『ロランの歌』である。
ドン・キホーテが読み過ぎていた荒唐無稽な騎士道物語とは異なり、かなり現実的・人間的なあらすじからできているのが特徴だ。
中世フランスの作品ということで成立以降かなりの年月が経っているが、今日の日本の読者が読んでも十分面白い作品だと思う。

『ロランの歌』は、シャルルマーニュに仕える武勇の誉れ高きロラン伯を主人公とした叙事詩である。
イベリア半島で異教徒たちと戦っていたシャルルマーニュの軍勢が、敵方の降伏を受け入れ、フランスを目指して撤退することに決まる。
そしてそのしんがりを務めることとなったのがロラン伯を中心とする一隊なのだが、彼らは多勢による敵襲に遭い、窮地に陥ってしまう。
ロランは味方を呼び戻すべく合図の角笛を吹くよう勧められるのだが・・・。
ロランの活躍を歌い上げる武勲詩だけあり、他にもインパクトの強い登場人物が数名いるにもかかわらず、『ロランの歌』におけるロランの存在感は圧倒的なものがある。
ロランに焦点を当てて読んでいくだけでもかなり楽しめるに違いない。

欧米で、特にフランスでは非常に有名であるはずなのに、『ロランの歌』を題材にした絵画作品はそれほど多くないのではなかろうか。
右は『ロランの歌』の名場面の一つを描いた銅版画で、主人公であるロランと彼の名剣、そして角笛という、『ロランの歌』のエッセンスを凝縮したかのような見事な一枚となっている。
『ロランの歌』を読み終えた後で眺めると、いわく言い難い味わいのある絵に感じられることだろう。

『ロランの歌』を読まれた方には、スペインの武勲詩である『エル・シードの歌』もお勧めだ。
日本で紹介されているヨーロッパの中世文学はさほど作品数が多いとはいえないが、それだけ珠玉の作品が伝わってきているということなのかもしれない。
いずれにしても、『ロランの歌』は自信を持ってお勧めできる作品だ。
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文学を読む楽しみの一つ

《ロランに焦点を当てて読んでいくだけでもかなり楽しめるに違いない。》

 一人の人物に焦点を当ててよむというのは共感できます。

 文学はインパクトの強い人間と出会えるのも楽しみの一つなので、「ロラン」がどういう人物なのか読んでみたいです!

Re: 文学を読む楽しみの一つ

コメントありがとうございます。

私が思うに、ロランは騎士道を体現している一騎士として、とても魅力的な人物です。
必ずしも理性的とはいえない面もあるかもしれませんが、己の力に対する過剰ともいえるほどの自負心を抱く騎士は、やはり読者を引き付ける求心力に富んでいます。
そんなロランの魅力をひしひしと味わうことのできる『ロランの歌』、ぜひ読んでみてください。
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