『ヘンリー八世』 シェイクスピア(白水Uブックス)

シェイクスピア全集 (〔37〕) (白水Uブックス (37))シェイクスピア全集 (〔37〕) (白水Uブックス (37))

書名:ヘンリー八世
著者:ウィリアム・シェイクスピア
訳者:小田島 雄志
出版社:白水社
ページ数:242

おすすめ度:★★★☆☆




シェイクスピア最晩年の作の一つであり、最後の作品とさえ考えられている歴史劇がこの『ヘンリー八世』だ。
シェイクスピアの単独による執筆がなされたのか、他の誰かとの合作なのかが議論されるという、その成立過程に少々いわくの付いた作品である。
決してシェイクスピアの代表的な作品であるとは言い難いが、シェイクスピアが歴史劇で扱った王の中でヘンリー八世は日本でもその名が比較的知られている方なので、その分とっつきやすい部類に入る作品かもしれない。

ヘンリー八世の治世といえば、やはり彼の離婚問題が最大級の出来事と言えるだろう。
離縁された元王妃キャサリンなど、『ヘンリー八世』には痛々しい没落の様を見せる登場人物が複数存在し、見事な悲劇的場面を演じている。
ヘンリー八世にいいイメージを持っている人はほとんどいないと思うが、そんなあまり人気のない王をシェイクスピアがどのように描くのか、『ジョン王』の場合と同じく、読者の興味の的になるのではなかろうか。

しかしながら、『ヘンリー八世』において、タイトルロールでもあり、歴史上に悪名を残しているヘンリー八世の存在感は、意外と薄いと言わざるを得ない。
劇の進行の途中で読み応えのあるシーンが散見するとはいえ、大団円に向かって突き進むというスタイルの劇ではないため、いくらか緊迫感に欠けるところがあるのも事実だろう。
『ヘンリー八世』に対する批評家の判断も肯定派と否定派に二分されているようで、私の読後の印象はどちらかといえば後者寄りのものである。
ヘンリー四世』や『リチャード三世』と比べて、シェイクスピアの生きた時代から近い時期を取り扱ったものであるため、やや露骨に追従的な言辞が述べられているのも、個人的にはあまり好きになれない。
とはいえ、真偽のほどはどうあれ、シェイクスピアの最後の作品とされる『ヘンリー八世』が、シェイクスピアに関心のある読者を強く引き付けうる存在であることは疑う余地がないだろう。
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