『ジル・ブラース物語』 ル・サージュ(岩波文庫)

ジル・ブラース物語 1 (岩波文庫 赤 520-1)ジル・ブラース物語 1 (岩波文庫 赤 520-1)ジル・ブラース物語 2 (岩波文庫 赤 520-2)ジル・ブラース物語 2 (岩波文庫 赤 520-2)ジル・ブラース物語 3 (岩波文庫 赤 520-3)ジル・ブラース物語 3 (岩波文庫 赤 520-3)

ジル・ブラース物語 4 (岩波文庫 赤 520-4)ジル・ブラース物語 4 (岩波文庫 赤 520-4)

書名:ジル・ブラース物語
著者:ル・サージュ
訳者:杉 捷夫
出版社:岩波書店
ページ数:332(一)、266(二)、310(三)、303(四)

おすすめ度:★★★★




18世紀のフランスの小説家、ル・サージュによる長編小説『ジル・ブラース物語』は、ル・サージュの代表作であるとともに、ル・サージュの名を文学史に刻んだ作品でもある。
主人公が様々な冒険に巻き込まれるというピカレスク小説の流れを汲む作品で、本作の舞台となるのもピカレスク小説の本場とも言うべきスペインである。
ジル・ブラースの出会う人々が語る身の上話が一章を成していたりする点はどこか『ドン・キホーテ』のようでもあり、ついスペインの作家によるものと錯覚してしまうほど全体にスペイン色が色濃く打ち出されているのが特徴だ。

『ジル・ブラース物語』は、前途有望なジル・ブラース青年がスペイン中で数々の事件に巻き込まれながら、また、時には自ら事件を引き起こしながらも続いていく物語である。
数々の悪人に出会い、しばしば善人にも遭遇しつつも、ジル・ブラースの地位や懐具合はめまぐるしく変化し続ける。
読者はジル・ブラースの置かれている立場に気をもまずにはいられないことだろう。

『ジル・ブラース物語』に作品としての確固たる構成があるかどうかという問いに答えるのはそう単純ではない。
一見さほど前後の脈絡のなさそうなエピソードが連綿とつながっていくのだが、登場人物の配置に関しては必ずしも行き当たりばったりというわけではないのである。
好意的な見方をするとすれば、岩波文庫の紹介文に付せられているように、主人公ジル・ブラースの成長する様を描いた教養小説としても読むことが可能になるだろうが、いずれにしても、批評眼を眠らせてただただエピソードの連なりを素直に読むのが一番楽しめる読み方なのかもしれない。

後の文学作品においてもしばしば言及があることから、欧米、ことにル・サージュの母国であるフランスでは時代を画する一つの古典としてそこそこ読まれてきている作品であるはずなのだが、現在の日本ではそれほど注目を浴びることもないらしい。
確かに『ジル・ブラース物語』の作風は小説の作法としては古風なものであるし、今日の日本人の多くが古臭いと感じる作品なのだろうけれども、古風だからこそ味わえるクラシカルな趣というものを帯びていることは誰にも否定できないはずだ。
フィールディングの『トム・ジョウンズ』、スモレットの『ロデリック・ランダムの冒険』などと共に、18世紀の香りを楽しみたい方にお勧めしたい作品だ。
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