『生ける屍』 トルストイ(岩波文庫)

生ける屍 (岩波文庫)生ける屍 (岩波文庫)

書名:生ける屍
著者:レフ・トルストイ
訳者:米川 正夫
出版社:岩波書店
ページ数:129

おすすめ度:★★★☆☆




トルストイの戯曲の一つである『生ける屍』。
戦争と平和』のような大河小説はもちろん、『イワンのばか』のような民話、さらには『人生論』のように論文調の作品をも発表していたトルストイであるから、戯曲スタイルの作品があっても不思議はないというものだが、トルストイが戯曲を書いていたという事実はあまり知られていないのではなかろうか。
『生ける屍』はトルストイによる戯曲であるという一点においても大いに興味深いだろうし、また、『生ける屍』はトルストイの死後に遺稿として発表されたという経緯を持つため、なぜトルストイが『生ける屍』を発表しなかったのかを考えてみるのも面白いに違いない。

妻リーザのことを顧みず、若いジプシー女に熱を上げる夫フェーヂャ。
リーザは二人の友人であるカレーニンに夫を連れ戻してくれるようにと頼むが、そのカレーニンこそは、かつてリーザに結婚を申し込んだ男だったのであり・・・。
『生ける屍』の読者は、ロシア文学における一大テーマである「余計者」の系列に属する男に再び出会うことができるだろう。
そもそも、『生ける屍』という表題の意味するところ自体が、「余計者」に対するいささかどぎつい形容に他ならないのではなかろうか。
また、『生ける屍』には、場面が細分化されているという特徴がある。
ひょっとすると舞台にかけるよりは読書に向いている戯曲なのかもしれない。

使用されている漢字や仮名遣いこそ古いが、そこそこ版を重ねてきている『生ける屍』は、絶版となっている岩波文庫にしては比較的入手しやすい部類に入る。
ましてその価格帯も手頃なので、トルストイに関心のある方はぜひ一読してみていただきたい。
読者は『生ける屍』の中に必ずやトルストイらしいヒューマニズムを見出されることだろう。
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