『死の如く強し』 モーパッサン(岩波文庫)

死の如く強し (岩波文庫)死の如く強し (岩波文庫)

書名:死の如く強し
著者:ギ・ド・モーパッサン
訳者:杉 捷夫
出版社:岩波書店
ページ数:373

おすすめ度:★★★★




女の一生』、『ベラミ』と並ぶモーパッサンの長編作品の一つがこの『死の如く強し』だ。
決して作家生活が長かったとはいえないモーパッサンだが、そんな彼にとって後期の作品に分類される長編作品で、それだけ円熟の域を感じさせる仕上がりになっているのは間違いないように思う。
現在新品は出回っていないが、いつ再版されてもおかしくない読み応えのある一冊なのでたいへんお勧めだ。

パリの流行画家の一人であるオリヴィエ・ベルタンは、裕福な伯爵夫人と長らく愛人関係にあった。
画家も夫人もすでに若くはなく、互いに自らの容姿の衰えを気にしだしているのだが、そんな中、若くて活発な伯爵夫人の娘がパリにやってくることになる。
画家は若き頃の伯爵夫人を髣髴とさせるような魅力を娘の中に見出して・・・。
『死の如く強し』の一つの特徴として、画家と夫人、それぞれの心理描写が巧みに織り交ぜられているという点が挙げられる。
『死の如く強し』の読者は、独身の画家と家庭のある伯爵夫人の双方向から見た世界を目の当たりにすることができ、それだけ味わいに富んだ奥行きを感じさせられることとなる。
また、結末まで読み進めた読者は、意味深長なタイトル「死の如く強し」についても考えさせられるのではなかろうか。

『死の如く強し』は、いかにもモーパッサンらしい皮肉の効いた作品かというと必ずしもそうではない。
むしろ、世間でモーパッサンは『脂肪のかたまり』のような作風を得意とする作家であるというイメージが先行してしまっているからこそ、『死の如く強し』はモーパッサンの代表作とみなされることもなく、いくらか埋もれた地位に甘んじているのかもしれない。
しかし、モーパッサンに興味のある読者であればあるほど、ある意味でモーパッサンらしからぬ作品に強い興味を抱くのではなかろうか。
モーパッサンに関心のある方は、喜ばしい驚きを感じさせてくれるこの『死の如く強し』をぜひ一読いただければと思う。
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