『アメリカ人』 ヘンリー・ジェイムズ(世界文学全集)

世界文学全集〈第2集 第12〉ジェイムズ アメリカ人 (1963年)世界文学全集〈第2集 第12〉ジェイムズ アメリカ人 (1963年)

書名:アメリカ人
著者:ヘンリー・ジェイムズ
訳者:阿部 知二
出版社:河出書房新社
ページ数:436

おすすめ度:★★★★




ヘンリー・ジェイムズ初期の長編作品の一つがこの『アメリカ人』である。
ジェイムズを知る人であればそのタイトルからも察せられるだろうが、ヨーロッパを訪れたアメリカ人を主人公に据えた、いわゆる「国際状況もの」であり、誤解を恐れずに言えば『ある婦人の肖像』と同じ部類の作品ということになるだろうか。
しかし実際にはかなり異なる雰囲気の作品となっているため、『アメリカ人』のオリジナリティに不足を感じる読者は少ないことだろう。

実業で成功し、巨万の富を得てヨーロッパを訪れたアメリカ人、クリストファー・ニューマン。
友人の助けを借りながらパリで理想の花嫁探しを始めた彼は、理想どおりの未亡人を見出した。
未亡人の方からも彼に好意を寄せてくれているようなのだが、その夫人が名門貴族の一員だったために・・・。
紳士的で、常に自尊心を失わないアメリカ人らしい主人公が、貴族によって構成される閉鎖的なパリの上流社会にどのように入り込んでいくのかを描くジェイムズならではの筆は、必ずや読者を楽しませてくれるだろう。

旧大陸と新大陸の価値観の対立を描くことのみに止まらないところが『アメリカ人』の長所でもある。
『アメリカ人』においては、ヴェールに覆われたかのようにすべてを見せない伝統ある侯爵家に、読者はニューマンと共に少しずつ肉薄していくことになる。
どことなく謎めいた作風は読者の興味を強く引き付けずにはおかないはずだ。

私が思うに、『アメリカ人』の最大の短所は流通量の少なさにある。
かつての文学全集に収録されたものの他に翻訳を知らないし、再版などされるわけもないその全集版にも当然ながら数に限りがある。
細かいことを言い出せば他にも欠点は見つかるのかもしれないが、ストーリー性も強く、いかにもジェイムズらしい作品である『アメリカ人』が、もっと読まれるに値する作品であることは間違いないだろう。
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