『アロンの杖』 D.H.ロレンス(八潮出版社)

アロンの杖 (八潮版・イギリス・アメリカの文学)アロンの杖 (八潮版・イギリス・アメリカの文学)

書名:アロンの杖
著者:D.H.ロレンス
訳者:吉村 宏一、北崎 契縁
出版社:八潮出版社
ページ数:436

おすすめ度:★★★☆☆




ロレンス後期の長編作品である『アロンの杖』は、『カンガルー』や『翼ある蛇』と同じカテゴリーに分類されることが多く、ロレンスの作品の中では傍系に位置すると言えるかもしれない。
炭坑で働くアロンを主人公にする点が非常にロレンスらしいが、アロンは早々に炭坑を去り、イギリス国内から果てはヨーロッパへと遍歴を始めるのであるから、やはりやや異色な作品と呼べるのではなかろうか。

炭坑で働き、妻子を養ってきていたアロンだったが、彼はある時家族に別れを告げることもなく家を出て行ってしまう。
「杖」を手にした美貌の青年、アロンはどこへ向かうのか・・・。
『アロンの杖』の時代は第一次大戦後に設定されているが、アロンは別に戦争に参加し復員した後に家庭生活を捨てるに至ったわけではなく、彼には彼で戦争の傷跡とは別の思惑があるのである。
どれだけ社会情勢が変動しようと、常に個のあり方に鋭い角度から着目し、それを小説に仕上げるあたりは、いかにもロレンスらしいと言えるように思う。

ロレンスといえば男女や親子の関係性を描く作家というイメージがあるが、この『アロンの杖』においては男女関係、それも特に夫婦関係に焦点を当てているという印象を受ける。
小説の登場人物における個別的な関係性というよりは、広く世に通じる一般的な関係性を論じている部分も多く、実際に結婚している読者の心には、良きにしろ悪しきにしろ、何かしら響くものがあるのではなかろうか。

『アロンの杖』はもっぱら男性の視点で描かれているように感じられるため、ひょっとすると女性の読者にはあまり向いていない小説なのかもしれない。
その内容からして誰もが楽しめるという作品ではないようにも思われるが、読者の精神を揺さぶるだけの破壊力を備えているのも事実であり、読み応えのある作品を求める読者にはお勧めできる一冊だ。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク