『旅人への贈り物―ボルヘス日本滞在誌』 ボルヘス(法政大学出版局)

旅人への贈り物―ボルヘス日本滞在誌 (1982年)旅人への贈り物―ボルヘス日本滞在誌 (1982年)

書名:旅人への贈り物―ボルヘス日本滞在誌
著者:ホルヘ・ルイス・ボルヘス ほか
訳者:佐伯 彰一、神吉 敬三 ほか
出版社:法政大学出版局
ページ数:190

おすすめ度:★★☆☆☆




視力を奪われた高齢の身で1979年に初めて来日したボルヘスの様子を伝えるのが本書『旅人への贈り物―ボルヘス日本滞在誌』である。
新聞や雑誌に発表された記事や対談、パネル・ディスカッションの模様やエッセイなどが収録されており、来日当時八十歳であったボルヘスを浮き彫りにすべく編まれた、いわばアンソロジー風の本となっている。

約一カ月にわたり京都、奈良、長野、東京などを巡ったボルヘスが、各地で受けた印象や日本そのものに対して所感を述べていて、そこには当然ながら多少のリップサービスも予想されるが、それでも全体的にはたいへん興味深いと言える。
ラフカディオ・ハーンや紫式部を通して日本に強い興味を抱いていたというボルヘスが、その肌身で日本をどう感じたのかは、ボルヘスファンでなくとも知りたく思うことだろう。
最近の創作活動やボルヘスの文学に関する小論や対談もボルヘスファンを楽しませてくれる。

本書の欠点としては、同じ時期に複数の人が書いたものを集めた結果として、半ば必然的に内容上の重複がきわめて多いという点が挙げられるだろうか。
各々の執筆者や対談者がボルヘスが来日した時点でのビビッドな話題に触れないでいられるわけもなく、ボルヘスの口からも同じことが何度も説明されていて、文章量の割りに内容が薄く感じられるのは否めないように思う。

『旅人への贈り物―ボルヘス日本滞在誌』とはいっても、本書はボルヘス自身の手による原稿を刊行したものではなく、『旅人への贈り物』という書名にしてからが、ボルヘスによる「旅人への贈り物」を指すのではなく、古今東西の文学作品を読みふけり、実際に世界各地を訪れたことのあるボルヘスのことを「旅人」と呼んでいるに過ぎない。
本書はしばしば著者名の一人にボルヘスの名を冠することもあるようで、そしてそれが故に私は本書を手にしたわけだが、実際のところはボルヘスの文章や言葉はせいぜい全体の半分といったところだ。
ボルヘスの手になる著作を期待すると裏切られるかもしれないが、来日した頃のボルヘスを知る上では格好の一冊となっていることは間違いないはずだ。
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