『金』 エミール・ゾラ(藤原書店)

金 (ゾラ・セレクション)金 (ゾラ・セレクション)

書名:
著者:エミール・ゾラ
訳者:野村 正人
出版社:藤原書店
ページ数:568

おすすめ度:★★★★




ルーゴン・マッカール叢書第十八巻にあたるのが本書『金』である。
証券取引所に出入りし、株の取引きをする人々を描いており、その表題はまさしく『金』の一字がふさわしい作品となっている。
そしてゾラの手になる『金』が単なる金融小説を越えた深みのある人間ドラマに仕上がっていることは言うまでもない。

『金』の主人公は『獲物の分け前』の読者にはすでにおなじみのアリスティッド・サッカール。
事業の失敗により財産を失ったサッカールは、再び金と権力を求め、鉱山や鉄道といったオリエント地域の開発事業に大規模に投資するユニヴァーサル銀行の運営に乗り出した。
フランスの金融界の支配者として君臨するユダヤ系資本に立ち向かった彼とその銀行の運命は・・・。
読み進めていくうちに結末はある程度予想がつくかもしれないが、それにもかかわらず『金』の読者を引き付ける力は最後まで衰えを見せないように思われる。

『金』には様々な階級のいろいろな人々が非常に生き生きと描かれており、実際に起きた事件を下敷きに組み立てられた物語は、ゾラの作品の常とはいえ、やはりリアリティに満ちている。
円熟期と言ってもいい頃に書かれた作品であるだけに、ゾラらしいダイナミズムが随所に脈打っており、ゾラの作風を好む読者にとってはお気に入りの一作品となることだろう。

『金』を手にするに当たり、内容的な結びつきの強い『獲物の分け前』は先に読んでおいたほうがいいかもしれない。
獲物の分け前』におけるサッカールの振る舞いや、妻や息子など、周囲の人間とのかつての関係性がしばしばほのめかされるからだ。
そうはいっても、『金』が単独での鑑賞にも十分耐えうる力強い作品であることは間違いないだろう。
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