『ピエール』 メルヴィル(国書刊行会)

ピエールピエール

書名:ピエール
著者:ハーマン・メルヴィル
訳者:坂下 昇
出版社:国書刊行会
ページ数:400

おすすめ度:★★★★




メルヴィルの代表作である『白鯨』と同時期に執筆・出版されたのが本書『ピエール』である。
メルヴィルらしい形而上的、神秘的な難解さが全面に打ち出されており、残念なことながら『ピエール』を楽しめる読者層は決して幅広いとは言えないが、それだけ読後のインパクトには強烈なものがある。
物語性の強い作品を求める方にはお勧めできないが、メルヴィルを語る上では欠かせない重要な作品であると言えるはずだ。

田舎の裕福な名家の跡継ぎとして生を享けたピエールは、姉弟のように仲睦まじい母と暮らしていて、天上的な美貌の婚約者にも恵まれるという、世にも羨まれるような境遇にあった。
しかし、ある日のこと、亡き父の遺した異母姉であることを自称する女からの手紙を受け取ったことで、彼の人生行路は大きく舵を切ることとなり・・・。
作中にはメルヴィルが得意とする暗示的・象徴的な技法が多用されているので、『ピエール』をより深く味わうためには、読者の側にもそれなりの集中力と洞察力が期待されるように思われる。
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『ピエール』は右の『ポーラX』の原作としても一時期注目を集めていた作品だ。
メルヴィルの代表的な作品の一つであるにもかかわらず、映像化しても結局失敗に終わるに違いないと大方で予想されていたのが『ピエール』だが、名監督を得た『ポーラX』は、独特の世界観による『ピエール』の映像化に見事に成功している。
『ピエール』の読者はぜひこちらもご覧いただければと思う。

400ページにすぎない『ピエール』だが、活字が上下二段で組まれているため決して文章量が少ないわけではないし、さらに質的な重厚さにおいてはメルヴィル屈指のものがある。
やや大仰な文章も散見するが、それらを無理なく包含できるスケールを備えているのが『ピエール』だ。
著者の精神と真摯に向き合える本をお探しの方は、『ピエール』と対峙してみてはいかがだろうか。
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