『狐・大尉の人形・てんとう虫』 D.H.ロレンス(彩流社)

狐・大尉の人形・てんとう虫狐・大尉の人形・てんとう虫

書名:狐・大尉の人形・てんとう虫
著者:D.H.ロレンス
訳者:丹羽 良治
出版社:彩流社
ページ数:307

おすすめ度:★★★★




表題通りのロレンスの中編小説三編を一冊に収録したのが本書『狐・大尉の人形・てんとう虫』である。
ロレンスの存命中にもこれらの三編が一冊の単行本として発売されていたことから、作者であるロレンス自らが続けて読まれることを想定していた作品群であるといえる。
いずれも第一次大戦とリンクした作品となっており、男女関係を軸とした物語である点はとてもロレンスらしい。
そしてそれらが単なる平板な恋愛ドラマに止まっていないのも、ロレンスならではと言えるのではなかろうか。

『狐』の舞台は、二人の女性が拙い方法で経営している農園で、そこではしばしば鶏を荒らしにやってくる狐に悩まされていたが、そんなある日のこと、見ず知らずの若い男が二人を訪れてきて・・・。
『大尉の人形』は、器用さを生かし、人形を作って生計を立てている良家の娘ハネリと、その愛人である大尉の間の関係性が中心となる。
家族から離れて勤務に就く大尉のもとに、突然妻が現れたものだから・・・。
『てんとう虫』では、捕虜として収容されている傷病兵が、実は旧知の間柄である伯爵なのだとわかったダフネが女主人公を務めている。
ダフネはかつて、伯爵から伯爵家の紋章の一部であるてんとう虫をかたどった指貫をもらったことがあったのだが・・・。
三つの作品すべてにおいて、微妙な均衡を保っている三角関係が形成されていて、その変遷が読者を強く引き付ける力を持っている。

本書の収録作品はどれもどこかメルヘンを想起させるようなタイトルであるが、登場人物たちが時折ほとばしらせる鋭く個性的な情緒や思想は、『狐・大尉の人形・てんとう虫』の三編を一気に正統文学の高みに押し上げているように感じられる。
ロレンスの中編小説を読まれたい方には、『処女とジプシー』と同様、お勧めの一冊だ。
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