『鳥と獣と花』 D.H.ロレンス(彩流社)

鳥と獣と花鳥と獣と花

書名:鳥と獣と花
著者:D.H.ロレンス
訳者:松田 幸雄
出版社:彩流社
ページ数:277

おすすめ度:★★★☆☆




小説家として高名であるだけ、詩人としての側面が看過されがちなD.H.ロレンスであるが、彼は生涯に多くの詩作品を残した詩人でもある。
そして数ある詩集の中で最も評価が高いとされるのがこの『鳥と獣と花』のようだ。
全般にイメージの飛躍力に優れている詩作品が多く、その分読者の側でも一定の注意を払ってロレンスに付き従っていくことを要求されるように思うが、その先には必ずや彩り豊かなヴィジョンが開けてくることだろう。

『鳥と獣と花』は、「果物」、「木」、「花」、「福音書記者の獣たち」、「生物」、「爬虫類」、「鳥」、「獣」、「精霊」というグループ分けのなされているおよそ五十の詩から成っている。
ジャンルとして見た場合、「福音書記者の獣たち」だけが少々異色の観があるが、ロレンスが聖書に、特に黙示録に強い関心を示していたことを思えば、『鳥と獣と花』にそれらの詩が収められていることも当然のことと言えるだろう。
牧歌的なタイトルの他の詩にしても、そこにはしばしば宗教的な雰囲気が漂っており、やはりロレンスらしさが打ち出されていると感じさせられる。
色彩に対する感覚の鋭さはロレンスの小説作品においても散見されるロレンスの一つの特徴であるが、それらの特徴がより顕著に表れているのも詩作品ならではのことである。

『鳥と獣と花』には訳注がさほど豊富ではなく、読者の側で西洋文化に対して、またイトスギや巴旦杏といった植物の外観について、多少の予備知識を持っていることが好ましいだろうが、動物をテーマにしたものは比較的平易で、今日の日本の読者でも味わいやすいのではなかろうか。
主に小説家として知られているロレンスの詩作品ということで、読者層は限られているかもしれないが、『鳥と獣と花』がロレンスに興味のある読者を裏切ることはないに違いない。
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