『悪徳の栄え』 サド(河出文庫)

悪徳の栄え〈上〉 (河出文庫)悪徳の栄え〈上〉 (河出文庫)悪徳の栄え〈下〉 (河出文庫)悪徳の栄え〈下〉 (河出文庫)

書名:悪徳の栄え
著者:マルキ・ド・サド
訳者:渋澤 龍彦
出版社:河出書房新社
ページ数:346(上)、320(下)

おすすめ度:★★★★




ジュスチーヌまたは美徳の不幸』と並び、サドの代表作の一つに数えられるのが『悪徳の栄え』である。
ジュスチーヌまたは美徳の不幸』と対を成す作品であるが、物語性よりも思想性が強く打ち出されているのが『悪徳の栄え』の特徴で、サドの作品の中でも彼の悪徳礼賛哲学が理論的に説き明かされている部類に入るだろう。
表紙の絵からも想像されるように、作中における残虐性や倒錯性は甚だしいが、それだけサドらしい作品であることもまた事実だ。

美徳を守り不幸に陥ったジュスチーヌとは対照的に、自らの欲望を満たすために何物をも顧みることのないジュリエットは、悪徳と手を携えて栄えていく。
ジュリエットを筆頭とした悪人たちの、一般的な道徳観念を完全に排除した徹底的な悪人ぶりには、驚きといくばくかの称賛の念さえ覚えかねないほどだ。
ジュリエット物語又は悪徳の栄えジュリエット物語又は悪徳の栄え

抄訳である渋沢訳の『悪徳の栄え』に物足りなさを感じられる読者には、完訳である右の『ジュリエット物語あるいは悪徳の栄え』をお勧めしたい。
こちらは原題に沿った表題が付されていて、『ジュスチーヌまたは美徳の不幸』との対比がより明確になっているものの、1000ページを超える大部であるため、少々その敷居が高いと言わざるをえない。
かく言う私も完訳には手を出していないのだが、一般の読者が回りくどい文体を特徴とするサドを読む場合、抄訳の『悪徳の栄え』で十分なようにも感じられる。

渋沢訳の『悪徳の栄え』は、出版された際に猥褻文書のかどで裁判沙汰になり、最終的に有罪判決が下されたことでも知られている。
あくまで数十年前の話であるとはいえ、この事実は、『悪徳の栄え』は万人が楽しめる作品ではなく、中には本書の描写を不快に感じる読者も存在しうるということを示しているのではなかろうか。
そうはいっても、本書が記念碑的翻訳作品であることは疑いようもなく、いろいろな意味で興味をそそる作品であることは間違いないだろう。
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