『恋の罪』 サド(岩波文庫)

短篇集 恋の罪 (岩波文庫)短篇集 恋の罪 (岩波文庫)

書名:短篇集 恋の罪
著者:マルキ・ド・サド
訳者:植田 祐次
出版社:岩波書店
ページ数:458

おすすめ度:★★★★




サドの作品中で最も読みやすく、サドのものとは思えぬほどに「おとなしい」作品集である『恋の罪』から四篇を訳出したのが本書『短篇集 恋の罪』である。
サドに興味はあるけれどもあまりどぎつい描写は好きではないという方も、『恋の罪』であれば比較的容易に受け入れられるのではなかろうか。

いくら『恋の罪』が読みやすい作品集であるとはいっても、サドが扱う「恋」はやはり悪徳に満ち満ちている。
いろいろな作品でサドの表明してきている大胆不敵な思想が登場人物たちによって実践されており、小説家であると同時に思想家でもあったサドをよく表している短篇集となっている。
過激すぎて幻想的ですらある『ソドムの百二十日』などと比べると、『恋の罪』の世界ははるかに現実味があるというのも特徴であるといえる。
恋の罪 (河出文庫―マルキ・ド・サド選集)恋の罪 (河出文庫―マルキ・ド・サド選集)恋の罪、壮烈悲惨物語 (サド全集)恋の罪、壮烈悲惨物語 (サド全集)

『恋の罪』は、右に挙げるように岩波文庫以外にも出版されている。
渋澤訳の河出文庫版には、表題どおりの『恋の罪』からの作品とは別に、サドらしからぬと言っても過言ではない滑稽味あふれる小品まで収録されており、それによってサドのイメージが一新される方もおられるのではなかろうか。
水声社版には十一の短篇が収められていて、岩波文庫と河出文庫には収録されていない作品も訳出されているので、サドの作品を一つでも多く読みたいというかたにはこちらがお勧めだ。

過激さや残虐さの控えめな『恋の罪』は、決してサドの代表作ではない。
サドにしてはソフトな内容であることから、それだけ多くの読者を獲得できることは間違いないが、『恋の罪』からは様々な文脈で話題に上るサドの核心部分を知ることはできないだろう。
しかし、『悪徳の栄え』や『ソドムの百二十日』のみからサドを判断するというのもそれはそれで偏った見地であろうし、それを補完するものとしての『恋の罪』の価値は揺るがないのではないかと思う。
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