『永遠の歴史』 ボルヘス(ちくま学芸文庫)

永遠の歴史 (ちくま学芸文庫)永遠の歴史 (ちくま学芸文庫)

書名:永遠の歴史
著者:ホルヘ・ルイス・ボルヘス
訳者:土岐 恒二
出版社:筑摩書房
ページ数:212

おすすめ度:★★★★




「永遠」というテーマを作家としての根源の一つとして持っていると言っても過言ではないはずのボルヘスによるエッセイ集の一つがこの『永遠の歴史』である。
表題からすると「永遠」や「時間」についての考察のみで構成されている書物のようにも思えるが、実際にはそうではなく、ボルヘスらしい文学論も収録されている。
ボルヘスを知らない人がボルヘスの作品の一冊目として読むには適さないように思うが、ボルヘスの作品をすでに数冊読んでいてボルヘスに関心を持っている人ならば、必ずや楽しめる作品であるように思われる。

『永遠の歴史』は、「永遠の歴史」、「ケニング」、「隠喩」、「循環説」、「円環的時間」、「『千夜一夜』の翻訳者たち」、「覚え書 二篇」というエッセイから成っている。
大雑把に分けると、永遠にまつわる時間論を扱ったものと、比喩表現や翻訳などといった言語の問題を扱ったものとに分類されるだろうが、前者の時間論はやはり少々難解である。
永遠や時間に関して、過去の賢人たちによる諸説の概略を述べ、それにボルヘス自身のコメントが付されているという比較的平易なスタイルで書かれてはいるものの、展開されている議論はやはり抽象的なものなので、多少の予備知識や慣れがないと本書の内容は難しく感じられるかもしれない。
とはいえ、『永遠の歴史』は全篇を通じてボルヘスならではのシンプルな文体で書かれているので、小難しそうな表題に尻込みする必要はないはずだ。

伝奇集』に代表されるボルヘスの短編作品を読むに当たり、ボルヘスの作品に繰り返し用いられるテーマについてある程度の理解を深めておいたほうが、短編自体の味わい深さも増してくるに違いない。
そして、ボルヘスの考える時間論を読みたい方に最もお勧めな作品がこの『永遠の歴史』だ。
短篇作品を補完するだけでなく、エッセイそのものとしての面白みももちろん備えているので、ボルヘスファンはぜひ手にしていただければと思う。
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