『エッダ グレティルのサガ』 (ちくま文庫)

中世文学集〈3〉エッダ;グレティルのサガ (ちくま文庫)中世文学集〈3〉エッダ;グレティルのサガ (ちくま文庫)

書名:エッダ グレティルのサガ
著者:作者不詳
訳者:松谷 健二
出版社:筑摩書房
ページ数:377

おすすめ度:★★★★




ちくま文庫の中世文学集の一冊である『エッダ グレティルのサガ』。
北欧神話の集成である『エッダ』と、数あるサガの中でも代表的なサガであるとされる『グレティルのサガ』を併録しているという点だけではなく、文庫版であるという手軽さもあるので、幅広い読者層にお勧めできる一冊となっている。

『エッダ』に見られる北欧神話の世界においても、ギリシア神話に似て、きわめて人間的な神々が描かれている。
遠く離れた異国の神話であるにもかかわらず、『エッダ』に登場するオーディン、トール、ロキなどは、ハリウッド映画の『マイティ・ソー』のおかげもあって、今日の日本でもだいぶおなじみのキャラクターとなっているのではなかろうか。
ただ、本書の『エッダ』は全体の半分程度を訳出した抄訳なので、物足りなさを感じる読者もおられるかもしれない。

『グレティルのサガ』のほうはというと、『エッダ』と比べてリアリティの度合いに大きな差があるのが特徴で、こちらは主人公グレティルの生涯を描き出した英雄物語である。
人名の重複や耳慣れない地名などが頻繁に現れることが少々混乱を招きかねないが、自らの武勇だけを頼みに生きているグレティルの豪傑ぶりは、誰もが読んでいて痛快さを覚えることだろう。
登場人物の細かい心理描写などはもちろんないが、その成立時代を思えば、非常に完成度の高い作品であると感じさせられる。

アイスランドやノルウェーの文学作品は決して豊富に紹介されているわけではないが、それだからこそ、北欧ならではの雰囲気を味わうことのできる『エッダ グレティルのサガ』は貴重であるといえる。
『エッダ グレティルのサガ』を北欧文学への入門書として手にした方が後悔することはまれであるはずだ。
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