『ディケンズ短篇集』 ディケンズ(岩波文庫)

ディケンズ短篇集 (岩波文庫 赤 228-7)ディケンズ短篇集 (岩波文庫 赤 228-7)

書名:ディケンズ短篇集
著者:チャールズ・ディケンズ
訳者:小池 滋、石塚 裕子
出版社:岩波書店
ページ数:310

おすすめ度:★★★★




ボズのスケッチ 短編小説集』で作家活動をスタートさせたディケンズの、その後の十一篇の短篇を収録したのが本書『ディケンズ短篇集』である。
ディケンズといえばユーモアやペーソス、豊かな人物造形やストーリー性に富んだ長編作品がその醍醐味であると言えるだろうが、短編作品においてもストーリー性はやはり健在で、どの短編もあらすじに退屈することはないのではなかろうか。
ディケンズらしい少々回りくどい文体もそのままではあるものの、ほとんどの作品がニ十ページ程度とたいへん読みやすいので、気軽に手にしていただいていいように思う。

本書の収録作品には、サスペンス風の緊迫感に満ちたものや、ホフマンばりの怪奇な物語、さらにはポーのように自意識過剰気味の主人公が物語る作品もある。
一冊の短篇集としては文学ジャンルのバラエティーに富んでいて、しかもどの作品も読者を引き込む力を備えているように感じられる。
中でも特にお勧めな作品として、本書以外にも複数の翻訳が存在することが明かしているように、ディケンズの短篇の中で最高傑作との呼び声の高い『信号手』、実在の人間をモデルに書き上げられ、クライマックスまでの筋運びの巧みな『追いつめられて』の二作を挙げておきたい。

岩波文庫版の『ディケンズ短篇集』の欠点は、収録されている短編作品がディケンズの長編作品、たとえば『ピクウィック・クラブ』や『ニコラス・ニクルビー』にそっくりそのまま挿入されている話であるため、それらの長編の読者にとっては収録内容が重複してしまうことだろう。
とはいえ、一部の文学全集以外ではお目にかかることのできない短編も収録されているし、ましてディケンズの短篇作品の代表作である『信号手』はディケンズのファンであれば一読の価値あるものなので、ディケンズに興味のある方にはお勧めできる一冊だ。
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