『トニオ・クレエゲル』 トーマス・マン(岩波文庫)

トニオ・クレエゲル (岩波文庫)トニオ・クレエゲル (岩波文庫)

書名:トニオ・クレエゲル
著者:トーマス・マン
訳者:実吉 捷郎
出版社:岩波書店
ページ数:145

おすすめ度:★★★★★




ヴェニスに死す』と並び、トーマス・マンの中編小説としてよく知られているのがこの『トニオ・クレエゲル』である。
芸術と現実生活との相克を描いた芸術家小説の一つで、主人公のトニオ・クレエゲルにトーマス・マン自身の姿が重ね合わせられているため、トーマス・マンに興味のある方にとっては必読の一冊と言ってもいいのではなかろうか。

トニオ・クレエゲルは、北方的気質を持った謹厳な父と、南方的気質を備えた奔放な母に育てられた、感受性の強い内気な少年であった。
そんな彼が友情や恋愛を経験しながら、徐々に芸術家としての天分に目覚めていき・・・。
『トニオ・クレエゲル』には登場人物やイメージの反復が散見するが、そもそもそれほど長い作品ではないからか、それがいくらかやり過ぎであるように感じられなくもない。
しかし、仮にそれが本書の技巧上の欠点だったとしたところで、それを補って余りあるほどに見所のある作品であることには変わりがないはずだ。
トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す (新潮文庫)トニオ・クレーゲル ヴェニスに死す (新潮文庫)

『トニオ・クレエゲル』は、新潮文庫では『ヴェニスに死す』と合わせて一冊の文庫本として出されている。
岩波文庫版の実吉訳は非常に評判がいいし、私自身も読みやすい文章だと感じはしたが、トーマス・マンの二大中編小説を一冊にまとめた新潮文庫のお手頃さも捨てがたいところではある。

芸術家小説という作品の性質上、『トニオ・クレエゲル』は文学を志す青年が最も強い印象を受ける作品なのかもしれない。
そうはいっても、読みやすさの中にも味わい深さを秘めている『トニオ・クレエゲル』は、これからも幅広い読者層の心に美しい波紋を描き続けることだろう。
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