『トオマス・マン短篇集』 トーマス・マン(岩波文庫)

トオマス・マン短篇集 (岩波文庫 赤 433-4)トオマス・マン短篇集 (岩波文庫 赤 433-4)

書名:トオマス・マン短篇集
著者:トーマス・マン
訳者:実吉 捷郎
出版社:岩波書店
ページ数:393

おすすめ度:★★★★




トーマス・マンの初期短篇を17篇集めたのが本書『トオマス・マン短篇集』である。
全体の作風や基調には統一感があり、作家生活の初期にあるトーマス・マンの精神模様をかなり如実に映し出しているように感じられる。
トーマス・マンを知る上では欠かせない一冊といえるはずだ。

『道化者』や『トリスタン』のような、芸術家的精神と現実生活との葛藤というテーマを扱ったものは、そのままトーマス・マンの初期の代表的な短篇と呼んでも差し支えないだろう。
『トオマス・マン短篇集』の収録作品には、根底ではやはりトーマス・マンにおける初期の文学活動の集大成とも言うべき『トニオ・クレエゲル』に通ずる作品が多いように思われる。
そんな中に『衣装戸棚』のような独特の雰囲気を帯びている作品も交じっており、その幻想性が引き立っているのもまた事実だ。

個人的にお勧めなのは、トーマス・マン最初の短篇集の表題作にも選ばれていた『小フリイデマン氏』だ。
細やかな精神を持ちながらも不具者として生きてきたフリイデマン氏が、美しい夫人に心惹かれるようになるのだが・・・。
本書に収録されている作品の中で、『小フリイデマン氏』が最も強く読者の心に余韻を残す作品の一つであることは間違いないように思う。

短篇作品においても読み応えのある作品を数多く残しているにも関わらず、なぜかトーマス・マンの短篇はあまり邦訳が出版されていない。
そういう状況の中では、価格も手頃で再版も重ねている岩波文庫版の『トオマス・マン短篇集』の存在は貴重であるといえる。
トーマス・マンに興味のある方、特に『トニオ・クレエゲル』を気に入っておられる方に強くお勧めしたい一冊だ。
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