『翼ある蛇』 D.H.ロレンス(角川文庫)

翼ある蛇 (上巻) (角川文庫)翼ある蛇 (上巻) (角川文庫)翼ある蛇 (下巻) (角川文庫)翼ある蛇 (下巻) (角川文庫)

書名:翼ある蛇
著者:D.H.ロレンス
訳者:宮西 豊逸
出版社:角川書店
ページ数:409(上)、351(下)

おすすめ度:★★★★




ロレンスがメキシコを舞台に書き上げた長編小説がこの『翼ある蛇』である。
いわゆる「リーダーシップ」小説の一つで、全般に思想色が濃く、宗教的・神秘的な考えまで盛り込まれているのでロレンスの言わんとするところをすべて読み解くのは容易ではないかもしれない。
しかし、それだけ読み応えがある小説であることは間違いないし、ロレンスに興味のある方はぜひ読んでみていただければと思う。

メキシコを訪れたアイルランド人女性、ケイト。
闘牛の血なまぐささや、強盗の横行など、メキシコにあまり魅力を感じられないでいたケイトだったが、政情の安定しないメキシコ国内ではケツァルコアトルやウィチロポチトリといった古い神々を復活させようという動きがあることを知って興味をそそられる。
その運動の指導者と知り合いになったケイトは・・・。
『翼ある蛇』におけるメキシコは、ロレンス自身のメキシコ滞在経験を生かした周到さで描かれていて、メキシコを正面から取り扱った作品として読むだけでも十分楽しめるはずだ。

『翼ある蛇』は随所でメキシコ人が論じられているのだが、その書きぶりは批評精神に富んだロレンスらしいたいへん手厳しいもので、メキシコ人がそれを読んだ場合、あまり喜ばないのではないかと思われるほどだ。
とはいえ、今日のメキシコにまで通ずるような鋭い指摘も数多くあり、メキシコを旅したことのある人であればロレンスの言及している人間性を随所に見出すことができたのではなかろうか。

研究者の中には『翼ある蛇』をロレンスの最高傑作と推す声もあるようで、角川文庫版の『翼ある蛇』の表紙裏には、本作品がロレンスの最高傑作であると断言されている。
それはそれで少々強引な言明だと言わざるをえないが、ロレンスにとって一大テーマである男と女の関係、それを神秘的な側面から取り扱った作品という意味では、『翼ある蛇』の右に出る作品はないように思う。
関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

非公開コメント

カテゴリ
PR
最新記事
RSSリンク