『ジャック・ロンドン大予言』 ジャック・ロンドン(晶文社)

ジャック・ロンドン大予言ジャック・ロンドン大予言

書名:ジャック・ロンドン大予言
著者:ジャック・ロンドン
訳者:辻井 栄滋
出版社:晶文社
ページ数:253

おすすめ度:★★★★




ジャック・ロンドンの短編小説のうち、主に社会主義的な要素の強い作品を集めたのが本書『ジャック・ロンドン大予言』である。
幅広いジャンルの短編作品を残しているロンドンの業績を思えば『ジャック・ロンドン大予言』の収録作品にはかなりの偏りがあるが、ロンドンの社会思想を窺わせるその偏りこそが本書の長所となっているように思う。

『ジャック・ロンドン大予言』の収録作品は、『強者の力』、『ミダスの手先』、『スロットの南側』、『ゴリア』、『デブスの夢』、『全世界の敵』、『比類なき侵略』、『奇異なる断章』、『背信者』の9編となっている。
ストライキをテーマとする『スロットの南側』と『デブスの夢』、空想的な奴隷労働を描いた『奇異なる断章』や過酷な労働環境で働く少年を主人公とする『背信者』、これらの作品からはジャック・ロンドンの階級社会に対する厳しい批判が垣間見られる。
また、『ミダスの手先』、『ゴリア』、『全世界の敵』の3作は、超越的な力を得た個人または一集団が世界を支配しようと企てる点で類似の作品と言えるだろう。

本書の中で個人的にお勧めしたい作品は『スロットの南側』だ。
単にストライキをテーマにするだけでなく、主人公の心の動きが端的に描かれる中に、その背景として社会事情が絡み合っていて、自ずと奥行きのある作品世界を形成しているのが『スロットの南側』の優れているところではなかろうか。

なぜ本書が『ジャック・ロンドン大予言』といういささかオカルトめいた書名を選んだのかは定かではないが、いずれにしても、その内容はいたって真面目な短編集となっている。
短編作家としていくつかの顔を持つジャック・ロンドン、その社会主義的な一面を知りたい読者にお勧めの一冊だ。
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